事前にリスクが判明しても
方向転換には断固抵抗

 一体どういうことか、筆者の実体験から説明していこう。

 以前、ある企業の経営幹部から、SNSを用いたプロモーションを考えているので、実施前にリスク対策のアドバイスをしてもらいたいという依頼があった。

 会社にうかがい、担当者からその概要を聞くと、ネト…ではなく愛国心溢れる方たちからすぐさまクレームが飛んできそうな、センシティブな歴史問題に関係する部分があった。そこで、過去に似た方向で炎上した事例を提示して、このままの方向性だとこのような被害も考えられますよ、といくつかのリスクシナリオを指摘。未然に防ぐためにはプロモーションのタイミングや、打ち出しているメッセージなどをちょっと変更したらいかがですか、というアドバイスをさせていただいた。

 すると、この話を聞いていた人たちの中に、物凄い勢いで筆者にメンチを切っている方たちがいることに気づいた。後で聞くと、このプロモーションを立ち上げから担当していた責任者と、請け負っている広告代理店のクリエイターだった。

 もちろん、筆者はこのプロモーションにダメ出しをしたわけでも、中止にすべきだなどと主張をしたわけでもないが、彼らの目には、後からやってきて「自分たちの仕事」をコケにする失礼極まりない輩と映ったのだろう。

 ただ、こういう嫌われ方は、この仕事をしているとよくあることなのでさして気にならなかったが、それより驚くことが起きる。帰り際、経営幹部の方から呼び出されて、このようなことを頼まれたのだ。

「すいませんけど、あまり悪いことばかり言わないでもらえますか。せっかくみんなやる気になっているので」

 聞けば、このプロジェクトは現場からぜひやりたいということで上がってきたもので、今日までチーム一丸となって非常にいい雰囲気の中で進められてきたもので、経営幹部としては今のプロモーションの方向性を尊重したいという。また、半年以上も準備を進めていた関連部署にも大きな影響が出るので、このタイミングで内容を変更したくないというのだ。

 要するに、今のやり方から1ミリたりとも変えるつもりはないので、もしそれでトラブった時にダメージを最低限にする方法だけを教えてくれというわけである。