東京五輪を延期させた新型コロナの影響試算、損失は想定外の規模か東京五輪の「1年程度の延期」が決定した。中止は免れたものの、その影響はいかほどか Photo:Diamond

 今夏に開催される予定だった東京オリンピック・パラリンピック(以下、「東京オリパラ」と記述)。当初は「世界一コンパクトなオリンピック」を目指し、経費を7,000億円に抑えるというものだったが、経費は膨れ上がり、3兆円超に上るとされた。オリンピックに合わせて進めてきた事業などは多数あり、政府の方でもキャッシュレスなども含めたインフラ整備に力を入れていた。

 しかし、ここにきて中国発の新型コロナウイルスの影響が拡大し、世界中で多くの感染者が見られている。日米など先進7カ国(G7)首脳による緊急テレビ電話会議などを経て、安倍首相は3月23日、国際オリンピック委員会(IOC)が東京五輪の延期を決めた場合は、それを受け入れるという意向を表明。続けて3月24日、安倍首相とIOC会長の合意により、東京オリパラは正式に1年程度延期されることが決まった。

 筆者は東京オリパラの中止・延期が取り沙汰されるようになった3月中旬、いち早くそれらの事態が日本経済に与える影響について試算を行った。それをベースに、2020年の日本経済の目玉であった東京オリパラの経済効果がいかなるものだったか、そして延期された場合の見通しはどうなるのかを、改めて解説したい。

東京五輪の延期なら
期待されていた経済効果は?

 過去、オリンピックを開催した国は例外なくその前後に景気の拡大、株価や通貨の上昇を経験しており、オリンピック開催は当該国の経済にプラスの効果をもたらしてきた。前回のブラジルでは、2009年にオリンピックの開催が決定してから、競技場の建設や交通網の拡充など、様々なインフラ整備を通じて景気が押し上げられたが、観光収入や個人消費の増加という経路からも、経済成長率の押し上げ効果があった。

 今年の東京オリパラも、例外なく経済効果が期待されていた。東京が招致段階でIOCに提出した「立候補ファイル」の大会経費は、建設工事が本体工事費のみに限られるなど、計上される費用が基礎的なものに絞られていた。さらにIOCは、大会開催を側面から支える都市基盤整備などは大会後も残る「レガシー(遺産)」に当たるとして大会関係経費に盛り込まれなかったため、約7,340憶円にとどまっていた。