株価の見直しが必要となるケース
村上:成功したIPOというのは、ほとんどのケースが仮条件のレンジの上限でプライシングされています。ですが、昨今市場の雲行きが危ぶまれている中で、公募価格が仮条件の上限で決まらないケースや、仮条件自体のレンジの上限が想定価格よりも低くなってしまうケースも見受けられるようになってきました。
朝倉:先ほどの想定価格が1,000円という例ですと、仮条件のレンジが800円~1,200円だとしたら、想定の範疇と言えるのに対して、仮条件のレンジが500円~800円といったように、レンジの上限が想定価格よりも低いケースのことですね。具体的にはどのような場合に、仮条件が切り下げられるのでしょうか?
小林賢治(シニフィアン共同代表。以下、小林):仮条件が決められる前に、ロードショーが行われます。ロードショーとは、上場しようとしている会社の経営陣が、機関投資家へ行うプレゼンテーションのことですが、このロードショーによって株価及び需要に対する意見聴取を行います。ロードショーを行なった結果、投資家の反応が渋かったりすると、「仮条件を下げたほうがいいのではないか?」という判断をしなければなりません。
村上:様々な事案があり、単純に一般化することはできませんが、会社側が強気に出過ぎてしまったケースが多い気がします。また、証券会社の見込みほど買い需要が集まらなかったケースも見受けられます。株を買おうとする需要よりも供給が上回ってしまうと(超過供給)、買いたい人がいない中で上場することになってしまうので、売り圧力が強くなってしまいます。
小林:12月のようにIPO件数が多いタイミングだと、マーケットに放出される総金額が大きくなります。投資家の資金量も有限ですので、投資対象の銘柄が増えれば増える程、資金が分散されます。結果的に、各社への投資額が少なくなってしまいやすくなるのでしょう。
実際に、直近の数ヵ月で仮条件を大幅に切り下げたケースも見受けられますが、想定価格を決めた時点で想定されていた需給バランスと価格に対して、仮条件設定時の需要がかなり減退してしまった事例のようです。
こうした状態をそのまま放置してしまうと、将来的にはオーバーハング(大量に保有している大株主による売り圧力)につながり、株式の流動性自体にも影響が及ぶため、発行体である証券会社としても仮条件を見直さざるを得ません。