技術磨き上げは今も続く
コロナで減収も影響は限定的か

 その中で重点開発課題として掲げられているのは、以下の3点だ。

(1)低コストかつ効率的な保守体系の検証
(2)高温超電導磁石の長期耐久性の検証
(3)快適性の向上(いわゆる耳ツン対策)

 このうち特に注目されるのは、リニアモーターカーの心臓部である超電導磁石の技術革新である「高温超電導磁石」の実用化だ。リニア用高温超電導磁石は、すでに一部の試験車両に搭載されて走行試験が行われており、現在は長期耐久性能を確認している段階にある。

 超電導磁石は、電気抵抗がゼロになる超電導状態を維持するために常時、冷却をする必要がある。一般的な超電導磁石は液体ヘリウムによる冷却(マイナス269度)を行っているが、高温超電導磁石はコイルの素材を変更することで、電動の冷凍機による冷却(マイナス255度)を可能にする。

 液体ヘリウムは非常に高価であるだけでなく、超電導磁石が超電導状態を失う「クエンチ」とよばれる現象が発生した場合、電磁石の温度上昇により液体ヘリウムが急激に気化する可能性がある。高温超電導磁石の実用化に成功すれば、コスト削減と省メンテナンス性に加え、安定性向上に寄与するなどの利点がある。

 中央リニア新幹線の技術は、2027年の開業に向けて今も磨き上げられている。

 しかし、足元の状況は決して楽観できるものではない。3月以降、新型コロナウイルスの感染拡大によって東海道新幹線の乗客は半分以下に減少。東海道新幹線の減収幅は、昨年の旅客運輸収入から推計すると1カ月あたり550億円以上にも上るとみられる。

 こうした点からリニア中央新幹線計画の前途を危ぶむ声もあるが、2007年に全額自己資金での建設を表明した際の資料によれば、JR東海は当時、2015年から2020年頃までの経常利益を約2500億から約4000億円程度と見込んでいた。ところが実際には東海道新幹線の輸送量は予想以上に推移し、2015年は約4900億、2016年以降は5000億円以上で推移している。また最新の四半期報告書によれば、同社が保有する現金および預金は、JR東日本の3倍以上にあたる約5453億円にも達する。

 JR東海に影響を尋ねたところ「現時点で収入減があるからといって事業の計画を再考する必要があるとは考えていない。健全経営、安定配当を堅持しつつ、投資を続けていく」とのこと。新型コロナウイルスの終息までにある程度の時間を要したとしても、計画を修正する必要はないというのが実際のところだろう。

 新型コロナウイルス終息後の人の流れ、生活のあり方がどうなるかは、今のところ誰にもわからない。ウイルス禍で一気に普及したリモートワークが終息後も拡大を続ければ、日常の通勤形態は大きく姿を変える可能性がある。

 一方、新幹線が担う都市間輸送への影響は、鉄道以上に深刻な経営難に直面しつつある航空業界の事情も絡み、限定的なものになりそうだ。国内でコロナウイルスが終息したとしても当面、海外旅行需要は期待できそうにない。政府が計画している国内旅行促進策も鉄道の需要回復には追い風になるだろう。今はただ、じっと耐える我慢の時である。