JR「本州3社」の中間決算が出そろった。不動産・ホテルやSuica事業などが底上げするJR東日本、新幹線中心に運輸収入が絶好調のJR東海、さらに昨年の災害による減収減益から大きく回復したJR西日本と、3社ともに明るい内容であった。ただし、下半期の業績は台風19号の影響などによって、JR東日本とJR西日本は大きな損失を計上する見通しだ。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

不動産や決済で稼ぐJR東日本
JR東海は新幹線が絶好調

千曲川の氾濫で水に浸かった北陸新幹線の車両JR3社の中間決算はいずれも好調だったが、下期は北陸新幹線車両の水没など、台風19号による被害が少なからず業績に響きそうだ Photo:JIJI

 10月28日にJR東海、JR東日本、JR西日本が2020年3月期中間決算を発表した。景気の減速がささやかれるなか、「本州3社」の業績は引き続き好調が続いている。

 国内最大の鉄道事業者であるJR東日本の中間連結決算は、営業収益は1兆5188億円(前年同期比2.1%増)、営業利益は2965億円(同1.5%増)の増収増益となった。セグメント別に見ると、不動産・ホテル事業は既存店舗の売り上げが好調で前期比2.8%の増収。IT・Suica事業は、キャッシュレス化の進展でSuica電子マネーの利用と加盟店が大きく伸びたことが要因となり、営業収益が同14.0%、営業利益は同40.7%となる大幅な増収増益だ。

 営業収益の6割以上を占める本体の鉄道運輸収入は、前期比1.3%増と好調を維持している。けん引役となっているのが新幹線と首都圏在来線の定期外利用で、ゴールデンウイークの10連休化やラグビーワールドカップ輸送など特殊要因の他、訪日外国人旅行者(インバウンド)の増加が後押しした。

 JR東日本はインバウンドの鉄道事業売上高が、2018年度の260億円から2019年度は300億円に増加すると見込んでいる。2027年度には470億円まで引き上げる計画で、これは運輸事業の営業収益の5%近くを占める計算だ。

 東海道新幹線を擁するJR東海も好調だ。営業収益は9556億円(同4.1%増)、営業利益は4068億円(同4.1%増)の増収増益。セグメント別では流通業や不動産業の好調も目立つが、やはり何といっても主力の運輸業の営業収益が前期比3.2%増と好調を維持している点に注目したい。

 運輸収入7169億円の92%を占める東海道新幹線は、利用者数と利用距離の指標である輸送人キロが前期比2.9%増、運輸収入が同3.4%増と、引き続き需要の増加が続いている。これはリニア中央新幹線の建設計画を発表した2007年(2008年3月期中間決算)と比較して、輸送人キロで23%、運輸収入で22%の増加となる。

 東海道新幹線は、来年3月のダイヤ改正までに全ての車両を最高速度285キロの新型車両に統一し、「のぞみ」の1時間あたりの最大運転本数を従来の10本から12本に増強する計画だ。民営化以来、莫大な投資で推進してきた新幹線の輸送力・競争力強化が、いよいよ集大成を迎えることになるが、それは同時に東海道新幹線がついに輸送力の限界を迎えることを意味している。大井川の流量減少を巡り静岡県との協議が長引いているが、リニア中央新幹線の開業の遅れは何としても避けたいところだろう。