いつもなら、欧州連合(EU)の破綻を予言するのは英国と米国にいる右派のEU懐疑派だ。しかしこの数週間、欧州のエスタブリッシュメント層の中枢からも悲観的な発言が出ている。欧州委員会のジャック・ドロール元委員長は、EUの「生死にかかわる危険」を指摘。イタリアのエンリコ・レッタ元首相は、欧州が直面する「死のリスク」を警告した。スペインのペドロ・サンチェス首相は、現状を欧州にとって「第2次大戦以来最悪の危機」と呼んだ。ポルトガルのアントニオ・コスタ首相は「必要な措置を取らなければEUは終わりだ」と述べた。エマニュエル・マクロン仏大統領は、行動しなければEUは死を迎えるかもしれないと警告した。新型コロナウイルスは欧州の古傷をえぐり出し、債権国と債務国というかつての色分けに沿って欧州を引き裂いた。主としてラテン系の南部諸国と、主として北欧系とドイツ系の北部諸国とが分断される構図だ。新型コロナの大流行による経済・社会面の巨大な衝撃はすべての欧州諸国を直撃したが、ドイツとその周辺諸国はおおむね自力で苦境を乗り切ることができる。しかし、既に高水準の債務を抱えている南部諸国は助けを必要としている。その一部は2007~09年の景気後退からまだ立ち直っていない。
【オピニオン】欧州の古傷えぐるコロナウイルス
「コロナ債」めぐり南部と北部の分断あらわに
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