当初は対岸の火事だった中国の新型コロナウイルスの防衛戦だったが、ついに私たちもその当事者となる今、「中国式危機管理」への関心が高まっている。ここでは極端な封鎖措置の是非はいったん控え、生活者の視点から「中国式危機管理」と、その根底にあるものを見直したい。日本と中国に在住する複数の中国出身者が取材に応じてくれた。(ジャーナリスト 姫田小夏)
「東京怖い」「人、多すぎ」中国人の反応
4月12日、東京都は緊急事態宣言が発出されて初めての日曜日を迎えた。筆者の生活圏である東京・中野は、やはり多くの人の姿があった。食品スーパーは店内が狭く感じられるほどの混みようだった。
商店街や食品スーパーの画像を中国の何人かの友人に送ると、「まだこんな状態?東京怖い」「人、多すぎ」と驚かれてしまった。この反応は欧州在住の友人も同じだった。
上海在住のAさん(50、女性)は、筆者が送信した画像に対し「制服を着た女性は入場制限を行う係員ですか?」とコメントを返してきた。自動支払機のそばに立つ案内係を「入場制限の係員」だと勘違いしたのだ。それもそのはずだ。ウイルス禍を経験した中国人は、店舗側の感染防止対策、つまり「入店制限」「ソーシャルディスタンス」「検温」を何よりも気にするのだ。
武漢市の厳戒態勢とは異なり、上海市では春節明けに営業を再開したところが少なくない。「店舗は開けてはいるが、客はほとんど来なかった」と、上海在住の経営者Bさん(60代、男性)は振り返る。「上海でも『自粛』という措置でしたが、外出するにも出入りの手続きが非常に面倒なので、自ずと外出を控えるようになったのです」(同)。
ウイルス流行地区では住民を自宅に押し込める“手荒な行為”もあり、また上海でも「自分の行動履歴を隠す」などの違反者には罰則を与えるなどの厳しい措置もあったが、基本的に上海の生活者に求められたのは、通行証の携行や、建物への住人以外の立ち入り制限、あるいは店舗入店の際の検温の義務付けなどだった。こうした手続きが「外出はむしろ不便を伴う」という共通認識を生み、「外出自粛」につながったようだ。