抗ウイルス作用のある「ファビピラビル(一般名)」と呼ばれる薬剤を巡り、地政学的なライバル関係にある日本と中国が外交上の綱引きを演じている。両国はいち早く諸外国にこの薬剤を提供することで、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)と戦う姿勢を誇示しようとしている。この外交戦術の異例さが際立つのは、いずれの国で製造された錠剤もコロナ感染者に有効だと明確に立証されていないためだ。学術誌の論文審査を経た研究で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する有効性が示されたのは1件だけ。また、過去の研究では、妊娠した女性がファビピラビルを服用すると新生児に先天性奇形が生じる恐れのあることが示されている。中国での小規模の研究に関するその論文は、2週間前に何の説明もなくインターネットへの掲載を取りやめたが、米国時間16日に再び掲載された。