こうした業界の危機的状況が続く中、あるホテルプロデューサーのツイートが注目を集めた。

「ホテルが、お客様に泊まりに来て頂かなくてもビジネスが成立するビジネスモデルを今仕込んでいます」(原文ママ)

 投稿者は、京都や大阪など各地でホテルのプロデュース、運営を行うL&Gグローバルビジネスの代表、龍崎翔子氏だ。その土地の歴史やカルチャーをふまえた斬新な企画で業界内外から注目を集めるホテル経営者の一人だ。新型コロナの影響に伴い、同社は運営する5つのホテルを4月5日から休業している。

「泊まらなくても成立する」――。この状況下でホテルや旅館が事業を継続するには確かに理想的な手段だが、果たしてそんなホテルビジネスは実現可能なのだろうか。

 龍崎氏が、すでに実現に向けて動いていると話すいくつかの構想の1つが、“オンライン上のホテル”、HOTEL SOMEWHEREだ。

hotel somewhere
L&Gグローバルビジネスが運営するオウンドメディア「HOTEL SOMEWHERE」

 リアルなホテルの営業がかなわない中、オンライン上のメディアHOTEL SOMEWHEREを通じて、自社ならではの「顧客体験」を届けようという試みだ。今後は期間ごとに設定したテーマに基づいてコンテンツを配信するなど、オンライン上での発信をより一層強化していくという。龍崎氏は、積極的にメディア活用を進める背景をこう語る。

「私たちはもともと『ホテルは寝る場所ではなく、メディアである』という考え方を軸にホテルを運営しています。ホテルはお客さまにライフスタイルを提案し、体験してもらう場所。もちろん泊まっていただくことで私たちの提案は完成しますが、『体験』を提供することに、オンラインかオフラインかは、あまり本質的な問題ではないと考えています」

 マネタイズの手法としては、メディアに配信する記事自体を有料にしたり、広告収益を上げたりすることを考えているという。また、すでに同社ではホテルのコンセプトに基づいた衣服や雑貨などの物販も行っている。こうしたグッズのEC(電子商取引)での売り上げも、コロナ禍では重要な収益になりそうだ。

「ホテルの世界観」が確立されているからこそ、その世界観を軸に、形式上のホテルにとらわれないビジネスを展開することができる。

 通常のホテル営業による収益が見込めない状況では、まずは事業存続のための延命措置が求められる。こうした中、来客を伴わなくても成立する収益源を持っていることは、大きな強みとなり得る。