日本は少しずつ、確実に貧しくなっています。それでも平成の時代は昭和の遺産を食いつぶすように生きながらえることが出来ました。しかし、令和の時代はますます厳しさが増していくことは間違いありません。今はコロナのことで皆さん頭がいっぱいになっていますが、この危機が去った時にどんな経済状況が待っているのか。それを考えるとゾッとします。
 日本人の貧困化を食い止めるにはどんな方法があるのか?
 その一つは、一人ひとりが「投資家の思想」を持つことだと思います。これまで多くの日本人は「労働者の思想」しか持っていませんでした。しかしその思想では、もう未来がないのです。
「投資家の思想」こそが日本の未来を切り開くと私は信じています。少なくとも、その思想を持てた人は、生き残ることが出来ます。
 投資をすることがビジネスパーソンとしていかに大事であるかということを知っていただきたいと思い、私は『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)という本を書きました。ここで言う投資とは、チャートとにらめっこして売り買いを繰り返すことではありません。それは「投資」ではなく「投機」です。ギャンブルとなんら変わりありません。私が言う「投資」とは、もっと大局的でビジネスの本質に関わるものです。

米国の株価は何度も危機を<br />乗り越えて上がり続けてきたPhoto: Adobe Stock

コロナで暴落した米国の
株価もいずれ甦る

 日本人は投資が苦手なのだとしたら、逆に欧米人は投資が得意なのでしょうか。

 たぶん違うと思います。昔、テレビ番組や雑誌の記事で、米国の普通に働いている会社員でも株式に投資していたから大金持ちになれた、といった類の話がフィーチャーされたことがありました。それを日本では曲解して、「米国には投資クラブがあって皆がそこで切磋琢磨している」とか、「子どもの頃から投資教育が行われているため、大人になって株式投資が上達している」といった「とんでも話」が流布され、それを真似するような動きが方々でありました。

 でも、よく考えてみると分かることなのですが、米国の株価はずーっと値上がりしているのですから、ただひたすら持ち続けていれば儲かったのです。もし興味があったら、S&P500という株価インデックスの超長期チャートを見てください。1871年から2019年までの約150年間、もちろん途中で多少の上下はあったにしても、最高値を更新し続けています。世界恐慌もブラックマンデーもリーマンショックも、永遠に続くものではなかったのです。新型コロナウイルスの影響で、2020年2月以降、米国の株価は急落していますが、いずれ再び上昇し、最高値を更新していくでしょう。

 わざわざ大変な思いで企業研究をして、有望なビジネス、企業を探さなくても、S&P500という株式市場全体の動きを示す株価インデックスを買ってさえおけば、誰でも株式市場から相応のリターンを得られるはずなのです。

 つまり欧米人は株式投資が得意なのではなく、「お金がお金を生む」方法を知っており、かつマーケットが右肩上がりで上昇を続けてきたため、株式に投資してきた誰もが儲かったというだけに過ぎないのです。

「日本人は農耕民族だから株価を追いかけて儲けることが苦手」という意見もありますが、これも妙にねじれた話です。欧米人は狩猟民族だから、常に獲物を追いかけるのが得意であり、したがって、常に動いている株価を捉えるのが上手いと言いたいのでしょう。

 でも、それは結局、株価を追いかけているだけに過ぎません。資本家としての生き方を追求するのであれば、長期的に育つと思われる事業分野に資金を投下し、念入りに経営サポートをして、その事業分野を大きく育てていくことに専念するわけです。それはある意味、種を蒔いて、細かく水やりや草むしりをし、丹念に農作物を育てていく農耕民族の生き方に近いように思えます。