松下幸之助も本田宗一郎も
「経営者」であり「投資家」だった
このマインドを変えるためには、本来なら教育からしっかり見直していく必要があります。たとえば歴史であれば、「大化の改新は645年」などと年号を暗記するより、文明がどのようにつくられてきたのか、その中で資本主義がどのように機能したのかなどについて教えるべきです。子どもたちが、自然とお金や投資の重要性について学ぶきっかけをつくることです。
ただ、ここでひとつだけ注意しなければならないのは、「経営」と「投資」を切り分けないことです。松下幸之助や本田宗一郎は「経営者」としては知られていますが、同時に「投資家」でもあることを教えてくれる人は、どこにもいません。いや、そう思われてさえいないふしがあります。その裏には、経営者は素晴らしい仕事だけれども、投資家はどことなく後ろめたい仕事という印象があるからのように思えます。
でも、紛れもなく松下幸之助も本田宗一郎も、経営者であるのと同時に投資家です。
経営者は自己資金や金融機関から借りてきた資金でもって、設備投資や人材投資を行います。もちろんその際には、未来の経済環境、景気動向、商品の売れ行きなど、さまざまな見通しのもとに、どのような投資が必要なのかを検討しますが、それは、投資家が株式に投資する際に検討することと全く同じです。ただ投資する先が設備や人材なのか、それとも株式なのかが違うだけです。だから株式に投資する時には、常に経営者の目線で物事を考えることが必要なのです。
投資をすることは企業を経営するのと同じですから、そこに後ろめたさを感じる必要はいっさいありません。堂々と、子どもたちに対して資本家マインドを持つことの大切さ、株式投資の重要性を伝えていくべきなのです。
参考記事
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農林中金バリューインベストメンツ株式会社 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2007年より「長期厳選投資ファンド」の運用を始める。2014年から現職。日本における長期厳選投資のパイオニアであり、バフェット流の投資を行う数少ないファンドマネージャー。機関投資家向け投資において実績を積んだその運用哲学と手法をもとに個人向けにも「おおぶね」ファンドシリーズを展開している。著書に『ビジネスエリートになるための 教養としての投資』(ダイヤモンド社)など