可視化といえば、かつては札幌や東京、大阪でしか行われていなかったプライドパレードが、青森、岩手、名古屋、三重、福岡、熊本など、全国のさまざまな都市で開催されるようになり、2019年8月には中国・四国地方で初めて、香川県丸亀市で「丸亀レインボーパレード」が行われました。

 2019年には、セクシュアル・マイノリティであることを公表する政治家もたくさん誕生しました。4月に行われた全国統一地方選挙では、トランスジェンダー女性の上川あやさんやレズビアンのなめかわ友理さん、ゲイの石坂わたるさんらが、7月に行われた参議院議員選挙では、ゲイで、元東京都豊島区議でもある石川大我さんが当選しました。

 また、2020年4月から小学校で使用される保健体育の教科書では、初めてLGBTについても記載されることになったそうです。

ドラマの世界ではセクシュアル・マイノリティの
扱われ方が丁寧になっている

 一方、2019年2月には、女子サッカー選手の下山田志帆さんが、日本国内の現役アスリートとしては初めて、自分がレズビアンであることをカミングアウトしました。さらに、人気演歌歌手の氷川きよしさんが、ジェンダーレスなファッションやメイクでライブやメディアに登場するようになり、2019年末に放送された『NHK紅白歌合戦』では、女性歌手のMISIAさんが、ドラァグクイーンや巨大なレインボーフラッグとともに登場して紅組のトリを飾り、話題となりました。

 近年、セクシュアル・マイノリティを扱ったテレビドラマや映画は増加傾向にありますが、2019年にも『腐女子、うっかりゲイに告る。』『ミストレス~女たちの秘密~』(いずれもNHK)、『俺のスカート、どこ行った?』(日本テレビ)、『きのう何食べた?』(テレビ東京)など、トランスジェンダーやレズビアン、ゲイのキャラクターをメインに据えたテレビドラマが数多く作られ、2020年1月には、ゲイの青年を主人公とした映画『his』が公開されました。中には「単に流行りに乗っただけの、偏見に基づいたひどい作品」と評されるものもありますが、総じて、以前よりも、セクシュアル・マイノリティの扱われ方ははるかに丁寧になっているように思われますし、私は、こうした流れが一過性のブームに終わるのではなく、いずれ欧米のように、さまざまな作品に、当たり前のようにセクシュアル・マイノリティのキャラクターが登場するようになってほしいと願っています。

 人は物語からさまざまなメッセージを受けとります。そのような作品が増えることで、可視化はさらに進むと考えられるからです。