LGBT(セクシュアル・マイノリティ)の当事者は職場でカミングアウトをするべきか?

映画やドラマの世界でもゲイやトランスジェンダーのキャラクターが描かれ、「LGBT」というコトバ(セクシュアル・マイノリティの総称のひとつ)が知れわたっている。そのため、いまや当事者の「カミングアウト」は当たり前とも思われるが、必ずしもそうではない。「LGBT」の可視化が進むなかで、職場における「カミングアウト」の是非を考えてみる。(エスムラルダ)
*現在発売中の『インクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」』から転載(一部加筆修正)

LGBTの可視化を促している
「同性パートナーシップ証明制度」

 2017年に、私が初めて『オリイジン』(ダイバーシティ&インクルージョンマガジン)にエッセイを書かせていただいてから、あっという間に3年の歳月が過ぎ去りました。

 その間、世の中ではさまざまな変化がありましたが、セクシュアル・マイノリティをめぐる環境も少しずつ、しかし着実に変わってきているように思います。特に、セクシュアル・マイノリティの「可視化」は、ここ数年でさらに進みました。

 可視化を促した大きな要因の一つとしては、やはり「同性パートナーシップ証明制度」が挙げられるでしょう。

 2015年、渋谷区と世田谷区がスタートさせた同制度は、「法的効力がないのに、意味があるのか」「LGBTが、政治家や地方自治体の点数稼ぎに使われているのではないのか」といった批判を浴びながらも、日本中に広がっており、『オリイジン2019』刊行後の一年間だけでも、東京都豊島区をはじめ、全国21の市区町および茨城県、大阪府で導入されました。2019年10月に、福岡市と熊本市が、当事者カップルが転居した場合でも資格を引き継げるようにすることで合意するなど、自治体間での連携も進みつつあります。

 ただ、同性婚実現への道のりはまだ遠く、安倍晋三首相は2020年1月の参議院予算委員会で、その是非について「わが国の家族の在り方の根幹にかかわる問題で、極めて慎重な検討を要する」「現行憲法では同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されていない」と述べています。しかし、2019年2月に同性婚の実現を目的とした訴訟がスタートして以来、ネット上で同性婚についての記事などを見かける機会はずいぶん増えたように感じます。