文在寅大統領Photo:Handout/gettyimages

韓国の総選挙は文在寅政権与党の大勝という結果に終わった。新型コロナウイルスへの対応が評価されたためだ。これまで国会においては少数与党であったが、今後は政権の政策を実行に移しやすくなる。とはいえ、コロナ抑制や世界経済減速により同国経済は大きく減速している。回復への道筋は見えていない。(第一生命経済研究所 調査研究本部 経済調査部 主席エコノミスト 西濱 徹)

戒厳措置でコロナ感染爆発危機
乗り越え収束の兆し見える

 昨年末に中国で発見された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を巡っては、中国国内で感染拡大の動きが広がりを見せた後、中国との経済的な関係が深い韓国でも感染が急拡大し、2月末には新規の感染者数が1000人を上回る水準となるなど感染爆発が懸念される事態となった。

 こうした背景には、感染判明当初の文在寅(ムン・ジェイン)政権が比較的楽観的な姿勢を見せていたことがあると考えられる。しかし、その後は2015年の同国におけるMERS(中東呼吸器症候群)の感染拡大を受けて、朴槿恵(パク・クネ)前政権が強い批判にさらされたことを教訓に、一転して事実上の戒厳措置など感染封じ込めに向けて対応強化に動いた。

 結果として、足元では事態収束の兆しが見えつつあるなど、新型コロナウイルス対応を巡る「優等生」とも称されている。

 新型肺炎は「パンデミック(世界的大流行)」状態に発展しており、足元では感染の中心地は欧米など先進国にシフトしている上、新興国にも広がりを見せている。世界的にヒトの移動を制限する措置が広がり、それに伴いモノの移動も滞るなど世界経済の減速が避けられなくなっている。