ある静岡の学生服店では、3月、急きょ卒業式が中止になり、数百着のレンタルブレザーがキャンセルされるという危機にあった。そこで、「家族de卒業式」という企画を立案。式で着るはずだったブレザーをそのままご利用いただき、家族で面白おかしい卒業記念写真を撮っていただく。その写真を店内に掲示し、後で様々な賞を授与するというものだが、お客さんからは大好評。なくなりそうだった一生に一度の思い出作りに貢献できたとのこと。こういう機転と姿勢、そして具体的な行動が今こそ重要なのである。

 そして、改めて言いたいことは、顧客にとって付加価値の高いところは、本当は「行きたいところ」であるということだ。いずれ今の情勢は収束するだろう。そうして再び集うことが許されたとき、人は必ずそういう場所に行く。むしろ、集うことが許されず、行動すら制限されているこの体験こそが、そういう場所へ行き、集うことの価値を増大させている。だからこそ今、できることを考え、行うことで、「次」への布石を打っていくのである。

今だからこそ踏み込む、試すことができる
ビジネスの持続性のために

小阪氏
小阪氏

 ここで述べたことは、いずれも危機に見舞われたときのみ対処するようなものではない。しかし言いたいことは、こういう状況に陥ったからこそ踏み込んだり、試したりできるということだ。

 そして、取り組むためにも「考え」なければならない。そうなのだ。こういう状況は、これまで思うところはありながらも、日々の忙しさに、あるいは旧来の見方ややり方で流れてしまっていたことを、「考え」、見直し、変化へ踏み込むべき好機なのである。

 そうして踏み込むことは、あなたのビジネスや仕事を長く持続させる基盤作りとなる。それこそが、もし次にあなたのビジネスや仕事が不測の事態に見舞われたときにも、強靭な支えとなり、復活の礎となるのである。

◎小阪裕司(こさか・ゆうじ)
山口大学(美学専攻)を卒業後、大手小売業・広告代理店を経て、1992年「オラクルひと・しくみ研究所」を設立。人の「心と行動の科学」をもとにしたビジネス理論と実践手法(ワクワク系)を研究・開発し、2000年からその実践企業の会「ワクワク系マーケティング実践会」を主宰。現在全都道府県・海外から約1500社が参加。近年は研究にも注力し、2011年、博士(情報学)の学位を取得。学術研究と現場実践を合わせ持った独自の活動は多方面から高い評価を得ている。2017年からは、ワクワク系の全国展開事業が経済産業省の認定を受けている。また、「日経MJ」での500回以上におよぶ長寿連載コラム『招客招福の法則』を執筆。
本人のホームページ:https://www.kosakayuji.com/
著書:https://amzn.to/3cJUTPd