自己アピールの果てに記者会見で“けん玉”
コロナをきっかけに築地再開発の先送りに成功

 もっとも「広報を強化しましょう」の有言実行、初志貫徹ぶりがあまりに際立つのが小池知事である。

 朝夕の入退庁時の都庁2階でのぶら下がり会見、毎週金曜日の定例記者会見以外に、時にはスーパーでの買い物時の注意事項を伝えるといった、緊急性に疑問符がつく内容を含む頻繁な緊急記者会見と、メディアへの露出だけは“爆増”している。小池知事自身が手洗いなどを求めるテレビCMも目に付いた。

 加えて、YouTubeで夕方に始める「ライブ配信」では、当日の感染者数を読み上げNHKの首都圏ニュースでその模様が速報される。自身が日々、読み上げる感染者数の集計方法の把握と改善に思いは至らなかったのだろうか。感染者数の報告漏れを公表したのも、5月11日のライブ配信だった。

 ただ、ライブ配信の場では記者が質問することはできない。小池知事は同日夜の内閣府が入る建物でのぶら下がり会見で、新型コロナの抗体検査と抗原検査に取り組むと突然ぶち上げて、集計ミスの件をけむに巻いた。

 また感染者の集計ミスを都が公表する3日前の5月8日の記者会見では、玩具の業界団体から新型コロナのホテルでの療養者向けに寄贈されたとして、突然けん玉を取り出したことも記憶に新しい。もちろん、新型コロナはこのような空疎なパフォーマンスや広報戦略で乗り切れる問題ではない。

小池都知事肝いりのIT都政で起きた「手書きFAXでコロナ報告漏れ」のお粗末記者会見で突然けん玉を取り出した小池知事 写真:YouTube東京都公式動画より

 小池知事は、東京五輪の延期をめぐって安倍晋三首相を抱き込み、不倶戴天の敵である都議会自民党会派を抑え込むなど、新型コロナをむしろ政治的に利用している節さえある。

 さらに5月5日の記者会見では、当サイトが昨年、記事『小池発言を“新旧対照表”で検証、「築地は守る」の変質とごまかし』で指摘したように詭弁に詭弁を重ねるしかなくなった築地市場跡地の再開発計画について、その手続きを「当面休止」すると明言した。小池都政の“鬼門”ともいえる市場問題の弥縫策を、新型コロナを奇貨として先送りすることに成功した瞬間だった。

 5月13日の東京都内の新型コロナ陽性者は10人と、政府が緊急事態宣言を出してから最少となった。このまま減少すれば、小池都政の成果として7月の知事選で大いに喧伝されることになるのだろう。だが、これまでに生じた問題は決して見過ごされるべきではない。