「全庁横断型で一つのサイトに(新型コロナウイルスの情報を)一元化すること、そしてデータ中心で見せる」――。“爆速経営”で鳴らしたヤフー前社長の宮坂学副知事の意気込みは空回り。東京都で発覚した新型コロナウイルス感染者数の111人分もの報告漏れは、手書きやファックスによる超ローテクな集計の結果だった。だが、多忙を極める保健所や都の担当者ばかりを責められまい。自己アピールに血道を上げる小池百合子知事や、都庁全体の“IT革命”を任された宮坂副知事は一体何をしていたのだろうか。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
月刊誌に寄稿して都のサイトの見やすさを自賛
都と保健所の業務改善とは無縁の宮坂副知事
東京都副知事「感染症 VS. IT」戦記――。月間総合雑誌の「文藝春秋」6月号に、こんな寄稿をしたのは、ヤフー(現Zホールディングス)の社長を退任後、昨年9月に東京都副知事に就任した宮坂学氏だ。
日本の行政機関はIT化が進んでいないと従来から指摘されており、東京都庁も例外ではなかった。次世代通信規格の5G対応などを担うため、小池百合子知事に請われての鳴り物入りの就任だった。
宮坂副知事は新型コロナウイルスをめぐる対応で、都のウイルス情報サイトの取りまとめを指揮。PCR検査の実施件数や陽性者数をグラフで示すサイトをわずか1週間で完成させたのだという。
またGitHub(ギットハブ)上にサイトのソースコードを開示し、他の行政関係者らが同様のサイトを作成できるオープンサイトと呼ばれる手法を採ったことも話題を呼んだ。宮坂副知事がヤフー時代に掲げた「爆速経営」をもじって「『爆速開発』世界が称賛」と、文字通り称賛する記事もある。
ところが――。