「全局長が出席する対策本部会議で、小池百合子知事から『広報を強化しましょう』と提案があり、ついては、私に担当してほしいと直接話がありました」――。宮坂副知事は、冒頭で紹介した都のサイトの制作のきっかけとなった2月26日の新型コロナの対策本部会議の模様を、寄稿の中でこう振り返っている。
そして「このサイトが注目をいただいた要因は、『陽性患者数』や『検査実施人数』『検査実施件数』などが一目でわかるグラフの見やすさ、わかりやすさだと思います。『日別』と『累計』のボタンをクリックするだけで、グラフが入れ替わり、視覚的に推移を理解できるところは当初から、歓迎されていました」と自賛している。だが、元のデータとなる数字が誤っていれば、いくらグラフの見栄えが良かろうが何の意味もないし、誤った情報を拡散するだけだ。
さすがに保健所から都への報告の方法については5月12日以降、データベースに入力する仕組みに切り替えた。ある都幹部は「なぜもっと早くデータベースを活用しなかったのか」と不満を示す。
鳴り物入りで都庁内の”IT革命“を担うはずだった宮坂副知事。情報サイトの作成に当たって「私が最初に考えたのは、部局ごとに発信したのでは全体像がつかみにくいものになってしまうので、政策企画局を中心として全庁横断型で一つのサイトに一元化すること、そしてデータ中心で見せることでした」と振り返っている。
全庁横断型を目指すのであれば、サイトの見栄えやIT業界の評判だけでなく、なぜ多忙を極める都の感染症対策部門と保健所のやり取りを改善することに意識が回らなかったのか。都政策企画局政策調整課はダイヤモンド編集部の取材に「保健所は都の部局ではない。ご意見として承る」と回答した。