今夏に予定されていた東京五輪や、そのためのボランティア募集などの広報は、非常に丁寧かつ魅力を感じさせるものであった。多くの日本人にとって、開催されなくても特に困らない五輪、なりたくない理由の方が多いボランティアより、いざというときのセーフティネットの方が切実に必要な存在であるはずだ。

 広報の落差に、筆者は愕然とする。「借り上げビジネスホテルを、ネットカフェにも居られなくなった人々に使ってほしくないのかなあ」と、妄想したくなる。もしかすると、それは筆者の妄想ではないかもしれない。筆者には、思い当たるフシがある。

なぜか“貧困ビジネス“に
積極的だった東京都

 2017年末から2019年11月まで、厚労省で「社会福祉住居施設及び生活保護受給者の日常生活支援の在り方に関する検討会」が開催されていた。この検討会の争点の1つは、いわゆる「貧困ビジネス」の存続を許すか否かにあった。

 結局、相部屋や簡易個室(1つの居室に簡単な間仕切りを設け、1人あたり1.5畳~3畳程度のスペースを確保した居室。実質は相部屋)をなくし、「保護費のうち本人の手元に残るのは、多くとも2万円」といった搾取を伴う運営は抑制する方向とはなった。しかし、劣悪な居住環境や搾取が実際に消滅するかどうかは、不透明である。

 2019年、この検討会において、構成員の1人であった東京都福祉保健局生活福祉部長(当時)は、埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県・川崎市・千葉市・さいたま市・相模原市の連名で、大規模な貧困ビジネス業者の有りようを是とする内容の要望書を提出した。その要望書は、限りなく「普通のアパート」に近い小規模な住居で管理的ではない支援を提供するスタイルに対して、痛烈な批判を述べている。また、政府がそのようなスタイルを認めることについては、「貧困ビジネス拡大の恐れがある規制緩和」としている。

 このことを思い浮かべれば、東京都が基本的に「ネットカフェに居られなくなった人々は、大規模貧困ビジネス業者の施設へ」という方針を取っているとしても、特に不自然さはない。