武漢市内の会社のオフィス武漢市内の会社のオフィスで機器を試すリュー・ジュンキンさん Photo:Jeremy Page/The Wall Street Journal

 【武漢(中国)】昨年12月31日午前1時ごろ、当地の消毒会社に勤めるリュー・ジュンキンさん(31)は上司からの電話で目を覚ました。チームメンバーを集めて武漢華南海鮮卸売市場に向かうよう指示され、「1番優れたキットを持っていけ」と告げられた。

 リューさんは、その駅の近くにある多くの売店が迷路のように並んだ広大な市場については知っていたが、そこが市内で拡大する不可解な病気の発生源と疑われている場所であることは全く知らなかった。その病気は後に新型コロナウイルス感染症「COVID-19」と特定された。

 リューさんは市場に到着すると、現地当局者に食肉や漢方薬用に野生動物を販売する売店群へと案内された。そこにはヘビやイヌ、ウサギ、アナグマなどさまざまな動物の死骸やケージに入れられた生きた動物が並んでいた。

 リューさんたちが消毒剤を散布し始めると、当局者は売店や下水、商品からサンプルを採取し始めた。彼らはリューさんたちにも死んだ動物のサンプル採取を手伝わせ、ピンセットで排せつ物や毛皮をつまんでビニール袋に入れ、封をした。

 それから4カ月以上たったが、リューさんらがサンプルを採ったと話す動物のデータについて、中国当局はいまだに世界に公表していない。米国がコロナ・パンデミック(世界的大流行)の責任を巡り、中国への追及を強める中、中国政府は今ではコロナ発生源の特定に向けた国際的な取り組みを引き延ばそうとしているようだ。衛生の専門家や当局者数十人への取材で明らかになった。