北大路欣也・俳優北大路欣也氏 Photo by Takahiko Hara

時代劇の灯を絶やすことなく、約10年にわたり続いている人気シリーズ「三屋清左衛門残日録」。藤沢周平の傑作小説を原作に、北大路欣也演じる隠居した前藩主用人・三屋清左衛門(みつやせいざえもん)が、かつての同僚や知人が巻き込まれた事件の解決に奔走する物語だ。北大路は、撮影現場で若手俳優たちと対峙した時、どう向き合うのか。かつて昭和の巨星たちから彼自身が受け取ってきた「薫陶」とは――。(俳優 北大路欣也、取材・構成/小倉健一)

若手には「教える」のではなく
素直に自然体で接する

北大路欣也(以下、北大路) 初めてお会いする若い方に対して、こちらが何かを作ったり、色づけしたりしないで、素直に出会う。それが一番です。

「自然体」でいること。これに尽きます。それは諸先輩方の姿を見て学んだことです。

 私が10代の頃、現場には大河内傳次郎さん、片岡千恵蔵さん、月形龍之介さんといった大先輩がいらっしゃいました。それはもう、すごい緊張感です。

 ある時、大河内傳次郎さんとお仕事でご一緒した際、目の前に、私の憧れ(丹下左膳)がいるわけです。思わず見とれてしまい、自分のセリフをすっかり忘れてしまったことがありました。そうしたら「何やっているんだ!」と怒られましたね。「あ、いや……」なんてしどろもどろになって。

 憧れの人たちのそばにいるということだけでも大きな宝物ですし、だから、その方の振る舞いに対する自分自身の反応も出ます。それを見守ってくださる、そういう視線がいつもありました。

 私が10代前半の頃は、共演者がほとんど大先輩ですから、失敗すると「大丈夫、心配するな」と慰めてくださり、「それは違うぞ」とはっきり言ってくださったりと、温かい雰囲気を作ってくださいました。

 もし、あの雰囲気がなかったら、10代の私がいろいろな役を演じることは不可能でした。だから今、私が若い方に対して「自然体」で接しようと思うのは、かつて先輩方が私に見せてくれた姿そのものなのです。