安倍晋三検察庁法改正法案の今国会での成立は断念となりましたが、決して油断はできません Photo:Bloomberg/gettyimages

 政府与党は、大騒ぎになっていた検察庁法改正法案(正確には検察庁法の改正も含む“国家公務員法等の一部を改正する法律案”)の今国会での成立を断念し、秋の臨時国会での継続審議としました。

 その一方で、渦中の黒川弘務氏が賭け麻雀という何とも情けない理由で東京高等検察庁検事長を辞任したので、これでこの問題は一段落かと思う人もいるかもしれませんが、決して油断はできません。メディアは検察庁法改正の問題点のごく一部分しか報道していません。さらには、検察庁法改正が溶け込んでいる国家公務員法改正については、ある意味で検察庁法改正以上に問題があるにもかかわらず、与野党共に意図的に国会でもまともに議論していないし、メディアもしっかりと報道していないからです。

検察庁法改正の
ややこしい問題点

 検察庁法改正については、これまでの野党やメディアの報道では、政府は今年1月に黒川氏の任期延長をかなり無理して行ったので、今回の法改正で内閣が検察幹部の定年延長を行えるようにすることで後付けで正当化しようとしている、政権の意向で定年延長が行えるようになったら三権分立が揺るがされる、というものでした。

 確かに、今年1月の黒川氏の任期延長は、「検察官には国家公務員法の適用はない」としてきた検察庁法施行以来の政府の立場を、閣議決定だけで解釈変更してしまったのですから、いくら政府が今回の法改正で「検事も行政官なのだから、一般法である国家公務員法が適用されるのは当然」と主張しても、やはりちょっと無理があると思います。

 それでは、検察幹部の定年延長を内閣の判断で行えるようにすることだけが問題かというと、そうではないことに留意する必要があります。この点について議論するならば、別の2つの大きな問題点についても議論すべきなのです。