検察庁法改案を巡って、国会が紛糾している。ソーシャルメディア上でも「三権分立が侵されるのではないか」「民主主義の根幹に関わる」など、疑問を呈する声が多く挙がっている。しかし、安倍政権が司法に介入するのは今に始まったことではない。週刊ダイヤモンド2017年2月25日号「司法エリートの没落 弁護士 裁判官 検察官」では、最高裁判所の判事人事に政権が介入したとされる内幕を詳細レポートしている。今回、その記事を特別にダイヤモンド・オンラインで公開する。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
東京都千代田区の日比谷公園の西側には、法務省や検察庁、東京高等裁判所、日本弁護士連合会といった法曹界中枢の高層ビルが立ち並ぶ。
1月中旬。公園の指定された場所で待っていると、日弁連の内部事情に詳しい関係者が現れた。襟には弁護士バッジが見える。
弁護士は怒りをあらわにして吐き捨てた。
「日弁連は内閣から完全に足元を見られている。司法の独立が危ぶまれる事態だ」
事の発端は1月13日にさかのぼる。この日、菅義偉官房長官が記者会見で、最高裁判事人事の閣議決定について発表した。
「最高裁判事、櫻井龍子および大橋正春の両名が定年退官をされることに伴い、その後任として弁護士・早稲田大学大学院教授、山口厚氏および元英国駐在特命全権大使、林景一氏を最高裁判事に任命することを決定致しました」。記者の質問はドナルド・トランプ米大統領の就任に伴う日米関係への影響などに終始し、この人事が追及されることはなかった。
だが、一部の弁護士の間では衝撃が走った。その理由を理解するためには、最高裁判事の決定に至る経緯を理解しなければならない。