〈前回会見を開き、日本にとっては厳しい結果を発表いたしました。そしてその折、この評価はあくまで暫定的なもので、すぐにでも変更の可能性があることを述べました。我々は日本政府の打ち出す、斬新かつ創造力あふれた新しい政策に期待すると申しておりました。私たちのアナリストは慎重に日本経済を分析した結果、日本と日本国債についての新しい結論を得ました〉

 ダラスは軽く息を吐き、テレビカメラを覗き込むように見た。

〈日本の状況は、世界でも過去にも将来にも類を見ない1000兆円を超える債務超過に陥っています。さらに最近、そして数日前にも首都圏を襲う地震が発生しました。我々が地震の専門家に問うた結果では、近い将来今まで以上のマグニチュード、震度の地震が首都圏を襲います〉

 早く結論を言ってくれ。これじゃ、蛇の生殺しだぜ、という声が聞こえてくる。

〈私たちが下した評価はAプラスです〉

 突然、部屋の緊張が緩むのを感じた。次に静かだが重いざわめきが広まっていく。

「なんで評価が上がってるんだ。しかも2段階も」

「静かにしろ。これから理由を言うんだよ」

 鋭い声が飛んだ。

〈日本政府は首都移転計画を発表しました。しかもすでに計画は進んでおり、近いうちに第1次工事に着工するという情報を入手しました。日本政府は早急に新しい首都を造り、そこから来たるべき震災から東京を、そして日本を護ろうとしています。そしてこの首都移転を通して新しい経済活動を産み出し、雇用を作り、日本の再スタートにしようとしています。さらに日本政府は、現状の債務超過に関する解決策も具体的にまとめ上げています。我々インターナショナル・リンクは日本の状況を理解し、見守っていくことを約束します〉

 ダラスの記者会見は終わった。