「アメリカ大統領もテレビが気になってるんじゃないか。日本はアメリカ国債の大量保持者だ。下手をするとそれが中国に流れかねない」
一瞬の間があって、ロバートの言葉が帰ってくる。
〈ダラスの発表まであと少しだ。おまえはいやに落ち着いてるな。これ以上日本の格付けが下げられると、日本は完全にアウトだ。それとも、この件に関しては大いに自信ありか。先日のプレゼンでインタ―ナショナル・リンクのアナリストたちを納得させたと〉
「日本のサムライの言葉に『人事を尽くして、天命を待つ』というのがある。今さら慌ててどうなる。俺たちに出来ることはない」
〈俺は宮本武蔵のファンだ。しかし俺は、最後の最後まであがいていたいね。それがアメリカ流だ〉
始まるぞと言う、声が聞こえた。
森嶋は携帯電話を切った。
部屋中の者たちがテレビの前に集まっている。
室内の全員の目がテレビモニターに釘づけになっていた。
やがて、インターナショナル・リンクのCEOビクター・ダラスはゆっくりと話し始めた。