「なんだ、この男は。自分たちの職責を超えた発言だぜ。自分らの判断が一国の運命を左右するような言い方だぜ」
「そういう時代になってるんだから仕方がないじゃない。それくらい認めなさいよ」
「思い上がりだ。一企業がどんな評価を下そうが関係ない」
優美子が千葉に向かって、わざとらしくため息をついた。
「私たちは彼によって救われたのよ。これはまぎれもない事実なの」
優美子が誰にも文句は言わせないというように、強い口調で言い切った。
ダラスの言葉通り、その瞬間から円が買われ、国債の金利が下がり始めた。東証平均株価、ナスダックの株価も上がり始めている。
翌日の昼、森嶋は理沙と昼食を取った。
森嶋が電話をして誘った。理沙に代表されるマスコミの反応を知っておきたかったのだ。
初めは時間がないと言っていた理沙も、会社の近くでと言う森嶋の言葉でオーケーした。理沙は疲れ切ったという表情で現われた。
「2時間ほど前に岡山から帰って来たところ。私も総理の発表と同時に飛ばされて、この2日、ほとんど寝てないのよ。飛行機の中でうとうとしたけど、1時間程度じゃね」
理沙は森嶋の顔を見るなり、あくびをしながら言った。