臨時休業コロナ休業者への直接給付の新設には、どれほどの効果が望めるのか(写真はイメージです) Photo:PIXTA

休業者への直接給付新設で考える
雇用調整助成金との整合性

 政府の第二次補正予算案の大きな柱の1つとして、「休業者への直接給付」の新設がある。新型コロナウイルスの感染拡大で、政府の自粛要請を受けて休業を余儀なくされた飲食店など中小企業が急増し、休業中の従業員に支給する休業手当を、雇用保険から給付する雇用調整助成金が脚光を浴びた。

 しかし、この制度は中小企業には使い勝手が悪い。このため支給手続きの大幅な緩和や対象者の拡大、および給付率の引上げなどの特例措置が、次々と政治主導で行われた。それでも十分な成果が上がらないため、ついに企業を通さずに休業中の労働者が自ら申請できる「休業者向けの直接給付」が設立されることになった。これを9月末までの特例期間に設けるという内容を盛り込んだ雇用保険法の改正案が、今国会に提出される。

 新聞報道では、中小企業の従業員が企業から受け取った休業証明をハローワークに提出して直接申請すれば、賃金の8割の給付金が月額33万円を上限に受け取ることができる。この上限額は休業手当を支払った企業に支給する雇用調整助成金と同じ水準で、企業が雇用調整助成金を選択するか否かで、労働者が不利益を受けないように配慮するという。

 しかし、これはあくまで雇用調整助成金制度との関係における整合性である。他方で、本来の失業手当との関係ではどうだろうか。現行の失業手当(自己都合退職を除く)は、企業からの離職証明を出せば1週間で失業が認定される簡易な仕組みである。こちらは賃金の5割で、失業給付の基本手当日額8330円を上限として月20日勤務とした場合には16.7万円と、新しい休業給付の半分程度にとどまる。

 つまり、コロナ自粛要請で休業中の従業員と、コロナを契機に企業が廃業や倒産をして失業した従業員との間には、大きな不公平が生じる。もともと雇用調整助成金による休業手当と失業手当の水準は均衡していたはずだが、今回の何でもありの雇用対策で、そうした整合性は無視されてしまった。

 ここでより簡単で整合性のある手法として、今野晴貴氏のNPOなどが提唱していた「見なし失業手当」の方式が挙げられる。東日本大震災時には、大きな被害を受けて生産を中止した企業が離職証明も出せない状況の中、その従業員が離職していないにもかかわらず失業者と見なされ、失業給付を受け取った例がある。今回も、企業自体が存続していても、休業手当を出すのが困難な場合には、雇用調整助成金にかかわらず、従業員が一時解雇されたと見なして、速やかに失業手当を給付しておけば、はるかに多くの人々が迅速に救済されていたといえる。