画像の収集・共有をメインにしたSNSが人気を呼んでいる。第15回で紹介した「Pinterest」は、国内ユーザーも増え、日本語版のリリースが待たれる状態だ。お気に入りの画像を簡単に収集でき、独自のキュレーションで、自分だけのフォトアルバムを作れる点が人気の秘密とされる。

 しかし、せっかく情報を集めても、時間とともに忘れてしまうことも少なくない。気に入った店ならば実際に行ってみたいし、素敵な風景ならば、いつか旅した時に見てみたいと思うものだ。

 こうした「行動に移したい情報」はEvernoteに記録している方も多いだろうが、こまめにタグをつけて整理しても、大量の情報に埋没しているのが現状ではないだろうか。

tabのiPhoneアプリ「tab light」では、集めた情報の中から現在地に近いものを「リストビュー」「マップビュー」(左)「ARビュー」(右)の3種類の方法で確認できる。

 そんな悩みを解消してくれるのが、この夏リリースされた「tab」だ。キャッチフレーズは「interest to action」。文字通り、興味を行動に移すデジタルメディアである。

 使い方はシンプル。ユーザーは、tabを立ち上げ、ブラウズしながら自分の興味・関心のあるアイテムを見つけていく。気に入れば、ワンクリックで自分のページに保存。「良い情報をまとめている」と思うユーザーがいれば、Facebookのフィード購読感覚でフォローもできる。ここまでの仕様は「Pinterest」などとほぼ同じ。だが、大きく違うのは、tabには位置情報が付いている点だ。

 開発したのは、AR(拡張現実)技術を駆使したセカイカメラをヒットさせた頓智ドット株式会社。セカイカメラで培った位置情報との連携機能をさらに進化させたのが、このtabである。

「興味が持てるものを探すサービスはたくさんありました。それを“いま、実際に体験できますよ”と案内できるのがtabです。情報をシェアして終わりではなく、現実世界として行動を喚起し、アクションを起こすことができる。それによってユーザーさんの人生を豊かにしたい。これがtabの目指す世界です」(頓智ドット株式会社 CMO 井口尊仁氏)

 tabが本領を発揮するのは、ユーザーが街へ出てからだ。GPS機能付きの端末でアクセスすると、付記された位置情報をもとに、現在地周辺のアイテムが抽出。リマインド機能が働いて一覧できる。ユーザーは表示された情報を見て地図をたどりながら、その場所へ行くことができる仕組みだ。

 このtab、ネットからリアルへの導線作りという意味で、大きな可能性を秘めている。とりわけ活用を期待できるのが、自治体や商店街などが主催する地域イベントではないだろうか。

 例えば、街歩きツアー。参加者にスマートフォンを持参してもらう。現地でtabをインストール。使い方をレクチャーした後、街をめぐりながら写真を撮影、フォトコンテストを実施する。その成果を集めると、写真付きマップが一冊出来上がる。再編集してtabで発信すれば、位置情報付きのガイドブックを世界に発信することにもなる。

 もちろん良質なコンテンツを作るには、センスのあるキュレーターが必要になるが、街を編集するという視点でワークショップを開催し、楽しみながら人材を養成していくことも可能だ。

 すでに銀座、代官山などでは、実店舗と連携した形でエリア情報を発信しており、出版社と連動して、プロの編集者が「街情報」を公開する試みも行われている。

 インターネットと現実世界を結ぶ新しいツール。使いようによっては、情報発信という分野の大きなエポックになり得るかもしれない。

(吉田由紀子/5時から作家塾(R)