こうした新首都説明会が全国各地で開かれた。

 村津が中心となり、首都移転チームの全員が精力的に全国を飛び回り、テレビに出演した。

 森嶋も他のスタッフとチームを組んで全国に説明会を開いて回った。

 マスコミは連日、この話題を取り上げて続けた。

 ひと月もたたない間に、国民の間には岡山吉備高原が新首都予定地に定着していった。日本中の国民の目が、今までほとんど目立たなかった中国地方の高原に集中したのだ。

 全国の不動産業、建設業の人間が、岡山に押し寄せた。かつてのバブルの再現を思わせるような空気が漂い始めたのだ。

 しかし政府は一早く、新首都周辺の地価の凍結を決めていた。さらに意外なことに、吉備高原の大部分は国有地で残りの多くも県や市が所有する土地だった。その他の周辺の民有地は、すでに数社の大手不動産業者や個人が買い占めていたのだ。

 それを知ったとき森嶋は驚いた。それらはすべて、村津が付き合いのある企業や個人だったのだ。

 そして、さらに驚いたことには、買い占めていた企業や個人がほぼ買い取り価格に近い地価で政府に譲渡の意向を示したのだ。

「しかし企業も個人もよくすんなり土地の買い取りに応じましたね。このままいけば、膨大な利益が得られることは分かっていたのに」

 森嶋は村津に言った。

「そこが日本人の美点じゃないのかね。数字には表れないモノがあるって言っただろう」

「でも、僕にはなぜ、彼らがあの土地を所有していたのか分かりません。もし誰かが情報を流していたとすれば。考えようによっては、違法すれすれのことです。インサイダー取引ですよ。株が土地に変わっただけです」

「そうでもしなければ、このような大型計画は進みようがない」

 村津は淡々とした口調で答えた。

 首都移転に関して、ほとんどすべてが村津の計画通りに進んでいった。