森嶋たち首都移転グループは、不眠不休で計画の具体化を進めていった。

 総勢350人。すでにグループとは言えない大世帯であったが、現在もその名称が使われ、国交省の下部組織であり、リーダーは村津参事官だった。

 初期からいた20人足らずの若手官僚は各部門のトップに立って、数十名の部下を率いていた。

 首都移転チームは次々に基本方針を発表していった。

 首都移転準備室時代からの蓄積が全国的に役立ち、それ以上に村津参事官の人脈と準備は膨大で、多岐にわたり適切なものだった。森嶋は違和感を抱きながらも村津の指示に従っていった。

「新首都の建設事業は競争入札とするが、実質的には新日本建設をはじめとする国内スーパーゼネコン5社から幹事会社を選び、特定JV方式を取ることとする」

 JVとは共同企業体の略だ。

 建設と一言で言っても、高層ビル、道路、橋、トンネルなど、造る対象によって各企業に得手不得手がある。特に新しい都市全体を造るとなると、あらゆる種類の構造物が対象となる。

 そのためゼネコン同士で共同企業体を組み、それぞれが自分の秀でた専門分野を担当することで、スピーディーかつ効率的な作業を行うことが出来る。通常のJVは2、3社で結成するものだが、今回の首都建設では数十社が組むことになった。

「新首都は、完全な計画都市だ。電力、通信もスマートグリッドで効率化する。2010年からユニバや大日本エレクトロニクス、京菱グループなど、28団体で行ってきた実証実験の成果のすべてをこの都市に投入する」

 スマートグリッドとは、高機能なコンピュータネットワークによる制御を活用し、電力の最適化調整を行う技術だ。つまり、火力、水力、原子力、太陽光、風力など様々な発電施設から送られてくる電力を、必要なところに必要なだけ送り、無駄を最小限にしようというものだ。特に新首都には、再生可能エネルギーを中心に考えられている。

 この送電網は、水道やガスと同じく地下に埋め込まれ、電信柱は新首都では一切なくなる。

「新首都には、まず中心部に国会と各行政機関の本省を集中させる。また天皇陛下に国事でお使いいただく御用邸も用意する。これらに勤務する公務員は、およそ2万人程度とする。現状よりかなり少ない数になるが、残りは全国の地方分局に配置転換することになる。後の道州制に向けて、中央政府との調整機能を高める効果もある。そしてこれらを配置する中核地区の周辺は、業務区と外交文化区に別れる」