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前回、グローバル・モードにシフトするためには、「思想」「伝達方法」「ビジネスの進め方」の3つを押さえる必要があるとご紹介した。逆に言えば、英語が多少苦手でも、このモードの切り替えができれば、ビジネスはできるということだ。
米国の大学やハーバード・ビジネス・スクールで学び、総合商社で丁々発止のビジネスを行ってきた経験を踏まえて、現在、日本人の英語力向上とグローバル・リーダーの育成に携わる著者が、最新作『グローバル・モード』から抜粋してそのコツを紹介する。

英語はただの「通信手段」

 会議で活躍できないのはリスニング力が足りないせいだ、グローバルに行くならば、とにかくもっと高い英語力を身につけなければ――。皆さんそうおっしゃいますが、実は、その思い込みこそが「ローカル・モード」の典型です。「完璧主義」や「恥じらい」といった文化があるために、英語力が不十分であることを過度に悔やんでいるのです。

 しかし、グローバルでは英語はただの「通信手段」。英語を母国語としない様々な国のビジネスパーソンが、英語で普通にビジネスをしています。多少英語力が低くても、不便かもしれませんが、気落ちしたり遠慮したりするものではないのです。

 多様性が認められるグローバル社会においては、「英語が上手」なのも「英語が下手」なのも単なる個性にすぎず、それだけで馬鹿にされるべきものではありません。まずは、通信手段として最低限英語でやり取りできれば十分です。多少英語で苦労しても、専門性を活かして貢献しようという熱意があれば、チームに欠かせない個性として大いにリスペクトされます。

 逆に、英語力を苦にしてグローバルに出ることをあきらめたり、言うべきことを飲み込んだり、会議で遠慮したり、ビジネス上の妥協をしたりする方が恥ずかしく、プロフェッショナル意識に欠けるものと言えるでしょう。

 ちなみに、英会話の90%を理解するために必要とされる英単語数は900前後で、私たちは中学校までに既に1200〜1500程度の英単語を学習しています。世界に出て行く準備はもうできているのです。世界はあなたの専門分野や能力・スキルを心待ちにしています。本質は英語ではなく、ビジネスなのですから。

 完璧な英文をいくつも覚えようとするよりは、緊張したり恥ずかしがったりしない「折れない心」を持ち、「手持ちの英語で何とかやりくりする力」をつけ、「聞き取れなかったら聞き返すスキル」を身につける方が、よっぽど有用ですし、即戦力に近いのです。本書では、今の英語力でも活躍できる方法やスキルを随所で紹介していきます。

 大切なのは、英語力よりモードの切り替えなのです。思想から伝達方法、ビジネスの進め方までの3つのシフトは、大雑把に言ってしまえば、どれも「気配りの仕方」を切り替えるようなものです。

 ローカルでは角が立たないよう周りに合わせてきたものを、グローバルでは、違う者同士が窮屈な思いをしないように気を配る。互いの真意を汲み取るために察してきたところを、誰にでもわかるようきちんと確認しあうように気を配る。経験と勘で仕事を進めてきたところを、言語化し可視化して、全員が理解できるよう気を配る――。

 ローカルとグローバルでは、気配りの効かせ方も逆方向です。最初は戸惑い、苦労するかもしれませんが、ポイントさえ押さえられればこちらのもの。もともと気配りに長けた日本人ですから、海外の方が驚くくらい「グローバル流の気配り」を実現できるでしょう。

 実際に、連載第2回の冒頭で紹介した「英語の苦手な60人」も7日間の研修を経て、英語力の問題は些細なことであると気づき、グローバルに出ていける自信をつけるとともに、グローバル・ビジネスの魅力に惹かれていきました。

 ですから、英語力にそれほど自信がなくても大丈夫です。グローバル・モードにうまくシフトして、ビジネスでの “勝ち” を目指していきましょう。