コロナ感染による国ごとの致死率の差を
ウイルスの「3つの型」で読み解く新説

 上久保靖彦氏らの研究(Yasuhiko Kamikubo, Atsushi Takahashi, “Paradoxical dynamics of SARS-CoV-2 by herd immunity and antibody-dependent enhancement” )は、なぜ日本の死亡率が低いのか、なぜ国ごとに重症度や致死率が違うのかを明らかにしようとしている。まず、2019年12月に中国・武漢市で発生した新型コロナウイルスには「S型」「K型」「G型」の最低3つの型があることを発見した。これらの型は、伝染性と病原性が異なるため、それぞれの国でどの型がどの程度流行したかによって、国ごとの感染の広がりや重症度、死者数が異なることになったという。

 上久保氏らは、新型コロナウイルスとインフルエンザの競合による「ウイルス干渉」を数値化したrisk scoreの分布を分析した。そして、日本のインフルエンザの流行曲線に起こる変化から新型コロナウイルスの日本への到来を確認した。また、ウイルスの変異と世界への蔓延を検証。さらに、新型コロナウイルス感染症の致死率を予測する方程式を作成した。これは、仮説が述べられているのではなく、以下のように検証がなされているものである。

 上久保氏らによる具体的な研究成果は、以下の通りである(なお、新型コロナウイルスの感染拡大と変異は「GSAID:“Genomic epidemioloGy of hCoV-19”」で確認できる)。さきがけとして日本に到来したS型(Sakigake)は、無症候性の多い弱毒ウイルスで、インフルエンザに対する干渉は弱く、19年12月23日の週にインフルエンザ流行曲線にわずかな偏向を残したにとどまった。

 次に、S型から変異したK型(Kakeru)は、無症候性~軽症のウイルス。中国で蔓延し、日本に到来してインフルエンザ流行曲線が大きく欠ける結果を20年1月13日に起こした。

 続いて、ウイルスは武漢においてさらに変異して武漢G型(typeG、Global)となり、重度の肺炎を起こすため1月23日に武漢は閉鎖された。また、中国・上海で変異したG型(欧米G型)は、まずイタリアに広がり、その後欧州全体と米国で大流行した。一方、G型は日本にも到来したが、死亡者数が欧米諸国より2桁少ないレベルにとどまった。

 なぜ、G型ウイルスによる日本の死亡者数は欧米と比べて少なかったのか。上久保氏らはその理由として、日本政府が3月9日まで入国制限の対象地域を武漢に限っていたことを指摘する。19年11月から20年2月28日の間の中国から日本への入国人数は、184万人と推定されている。特に武漢では、閉鎖のアナウンスがなされる直前に500万人もが流出し、武漢から成田への直通便で9000人も日本に入国したという武漢市長の報告がある。その結果、S型とK型の日本への流入・蔓延が続いていた。

 そして、多くの日本人の間にS型・K型の集団免疫が成立した。具体的には、K型の侵入に対して、体内のTリンパ球が反応して獲得する「細胞性免疫」がG型への罹患を防ぐため、日本人の死亡者が少なくなったと主張する。また、日本と同じく中国人の大量流入があった韓国や台湾、香港、シンガポールなどでも同様の集団免疫獲得があったことで、死亡者が少なくなったと推測される。