静岡県を地盤とする注文住宅メーカー、富士ハウスが1月に倒産したことが、住宅業界に思わぬ波紋を呼んでいる。同社は、工事請負契約2186件を抱えて破産。住宅を完成させるためには多額の追加支払いが必要なケースもあり、社会問題化しつつある。

 この余波で、日本木造住宅産業協会は「静岡県下の会員住宅建設業者によると、契約時に住宅完成保証制度を活用したいという契約者も出ている」という。また住宅建設業者の倒産に対するセーフティネット強化を行政に求める声も出始めているため、住宅業界では「また規制強化になるのではないか」と警戒感を強めている。

 なぜなら2007年の建築基準法改正では、国土交通省の不手際によって確認検査が大幅に遅れて、住宅着工戸数が大きく減少。「官製不況」と呼ばれる事態に陥った。

 さらに今年10月からは、新たに「住宅瑕疵担保履行法」がスタートする。新築住宅について、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分に欠陥が発生しても、施主は補償されることになっているが、そのため売り主は住宅瑕疵担保責任保険への加入か、保証金の供託が義務づけられる。「施主に対して保証金分を上乗せ請求するのは、実際は難しい」(業界関係者)といわれており、業者のコスト負担が増大する。こうした規制の強化により、住宅建設業者は追い込まれているのが現状で、さらなる規制は業界の負担が大き過ぎる。

 とはいえ国土交通省も「斬新で、決定的なセーフティネットはなかなか見当たらない」と今のところ規制強化に積極的ではない。

 現在の住宅完成保証は任意制度だが、保障範囲は限定的。たとえば、ふくらみがちな工事費用は20%増しまでしか保障されず、ほかにも多くの条件が付されている。義務化するにしても、「リスクが大きくて保険会社が引き受けないだろう」(業界関係者)と現実味は乏しい。

 むしろ富士ハウスは非常に特殊な事例であることを知っておいたほうがいい。通常、住宅の請負契約の支払いは、手付金10%、着工時30%、上棟時30%、完成時30%というのが一般的。富士ハウスの場合、着工時に70%という高額な支払いが問題を大きくした。出来高に応じて必要額を支払っていく、従来の契約方法の認知を消費者に広げることが業界にとって重要だ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 野口達也)