まどわされない思考
『まどわされない思考 非論理的な社会を批判的思考で生き抜くために-The Irrational Ape』 デヴィッド・ロバート・グライムス 著 長谷川 圭 訳 KADOKAWA 2000円(税別)

 本書『まどわされない思考 非論理的な社会を批判的思考で生き抜くために』には、この手の「思考の誤り」を誘うケースが満載されている。また、意図的、あるいは無意識のうちに人を騙したり、攻撃したりする発言や情報のパターンも豊富な事例とともに紹介。昨今の社会不安に乗じたデマの拡散や、個人攻撃について考えるのにかっこうの1冊だ。

 著者のデヴィッド・ロバート・グライムス氏は、物理学者、ガン研究者、科学ジャーナリスト。1985年にアイルランドのダブリンに生まれ、オックスフォード大学とクイーンズ大学(ベルファスト)に所属している。BBCやRTE(アイルランド放送協会)で科学・政治・メディアに関するコメンテーターとしても活躍しているそうだ。

 本書から、もう1問出題してみよう。深く考えずに「直感的」に答えてみてほしい。

 野球のボールとバットが合わせて1万1000円で売られている。バットはボールよりも1万円高い。さて、ボールの値段はいくらだろう?

 ボーッと考えていると元気よく「1000円!」と答えてしまいそうだ。だが、それだと1万円高いバットは1万1000円で、合計は1万2000円だ。正解は「500円」である。

 本書によると、この問題(単位はドルだ)に対し、ハーバード大学、MIT、プリンストン大学の学生のほぼ50%が、直感的に答えて間違った。

 どうやら、人々は「直感」に自信を持ちすぎているようで、慎重に考えることを「面倒」だと感じるようだ。情報が氾濫する現代で、日々、いろいろなことをスピーディーに処理しなければならない環境の人ほど、そういった傾向にあるのではないか。

 本書の原題は「The Irrational Ape」。「理性に欠けたサル」という意味であり、著者は、直感に頼り、ある程度時間をかけて合理的に考えることをしない人をやゆして、このタイトルをつけたと思われる。

 では、「理性に欠けたサル」にならないためには、どうしたらいいのだろうか。