竹島の領有権を巡って韓国で反日感情が火を噴いた。サッカーW杯の共同開催など雪解けを思わせた両国関係は急速に悪化した。大統領選挙を控えた政治状況が「外に敵を作る」という安易な手法に政権を走らせたとも言われるが、愛国主義の背後には躍進する経済等の光に潜む深き“影”がある。

 その光と影が韓国の自信と不安が渾然一体となった「臆病な自尊心」を肥大させ、苛立つ人々を反日へと向かわせているように見える。

不平等の拡大で
ポピュリズムが台頭

 まず韓国メディアが紹介する「韓流経済」の盲点を報告しよう。

 ソウル聯合ニュースが4月23日、「所得格差拡大でポピュリズム台頭の恐れ」という記事を掲載している。国策シンクタンク・韓国開発研究所(KDI)の分析を紹介し、「1990年代前半まで改善に向かっていた所得格差がアジア通貨危機の前後から再び悪化している」「一握りの人々だけが豊かな暮らしをしているという考えが広がり、ポピュリズムや保護貿易論が台頭する可能性がある」と警告した。

 報告書は技術進歩と製造業の海外移転が不平等を拡大する、と指摘した。先端技術は高い教育を受けた層が有利で、低所得層は工場の海外移転で賃金が低下する。中国やブラジルでは政府が所得の再分配に力を入れているが、韓国は教育・保険など公共サービス対する公的支出はGDPの8%に過ぎず、OECD平均の13%を大きく下回る、と「手薄な再分配政策」を問題にしている。

 アジア危機で破綻寸前まで追い込まれた韓国は、IMF管理下で回復を遂げた。輸出拡大を最優先にし、不安定な雇用、低賃金など弱者に犠牲を強いる結果となった。新自由主義的な経済運営が伝統社会と摩擦を起こし、人々を苛立たせている。年功序列、先輩後輩、尊敬といたわり、といった儒教的モラルが崩れ、不機嫌な空気が充満している。