「もっと強い意識を持っていこう」と言ったのに、いつまで経っても変わってくれない。「チームのことを考えて行動すれば評価は上がる」と伝えたのに、自分の仕事しかしない。部下にアドバイスをしたのに、「思ったのと違う伝わり方になってしまった」「何度言っても変わらない」「伝えたかったことと違う動きをされて困った」といった経験はありませんか。「伝えたつもりが伝わっていなかった」というコミュニケーションの問題は日々起きています。

部下にどのような言葉を使って伝えれば、部下はわかってくれるのか、適切な行動をとってくれるのか――きちんと納得感のある言葉を伝えるリーダーもいれば、曖昧な言葉で伝えるリーダーもいて、「言葉」の重要性が高まっていると感じた方も多いでしょう。心を動かす「言葉がけ」のできるリーダーに部下はついてくるのです。

自分の意識を変えるのでさえ難しいのですから、部下の意識を変えさせるのはもっと難しいもの。そこで、新刊どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解から、シーン別にNG行動・発言とOK行動・発言を対比させながらどのような言動で接したらいいかを紹介していきます。

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×リーダーが決める
○部下に決めてもらう

リーダーの悩み:先延ばしにしがちな部下は、もっともなことを言ってやらないので困っている

 B2C向けにサービスを広げている大手生活関連サービス会社の経営企画部では、毎月企画書を2件起案するノルマがありました。

 リーダーAさんの部下Cさんは先月慌てて、急ごしらえの企画を2件作成しましたが、当然採用されませんでした。リーダーAさんは、「今度は早めに取りかかって精度の高い企画にするように」と、Cさんに言葉がけします。

 それに対してCさんは「アイデアを温めています。今は他に終わらせないといけない仕事もあるので、終わったら始めます」と答えます。

 このように、なかなか行動しない部下に動いてもらうにはどうしたらいいでしょうか。

「時間不一致現象」をご存じですか。

 同じことでも実行する時期によって、難易度が違って感じる現象です。

 人は、未来は常に今よりもよく、未来の自分は常に今の自分よりも有能になっていると思いがちです。

 今より明日、3日後、1週間後と時が経てばうまくいくだろうと考えます。しかし、「後でならできるようになる」「時間が経てばいいアイデアを出せる」という考えはただの錯覚にすぎません。明日になっても3日後、1週間後になってもいい案は見つかりません。

…>「開始の締め切り」を設定しよう

 先延ばしすることには、何の意味もありません。先延ばしにした時点でスパートをかけるなら、そのエネルギーを前倒しして、スタートダッシュをかけたほうが集中できますし、仕事にかかる時間も短くなります。じっくり取り組む時間もあるので質も高いものになるでしょう。

 仕事をきちんと進める人は、いつまでに終わらせるかという「締め切り」の他に、いつから始めるかという「開始の締め切り」も定めています。

 仕事が予定通りに完成しない人はたいてい着手が遅いのです。着手しただけで、半分は完了したといっても過言ではありません。

「小さな仕事に分ければ、どんなことでも難しくはない」という、フォード・モーターの創業者ヘンリー・フォードの言葉があります。

 最初に着手するときは、着手から完了までの一連の仕事を小さなタスクに細かく分割し、1つの小さなタスクを5分ほどやってもらうようにするのです。

 たとえば企画書の作成なら、着手から完成までのタスクを細かく分割します。「1人ブレストでアイデアを10個出してみる」「成果物のイメージを描く」などです。

 なお「開始の締め切り」は、リーダーが「〇日までに始めてほしい」(×)と決めるよりも、部下に「いつからやる?」(○)と聞いて決めてもらうようにしましょう。

 なぜなら「行動宣言効果」といって、人は言葉や文章で自分の考えを公開すると、その考えを最後まで守ろうとする傾向があるからです。

 なかなか仕事に着手しなかった人でも、「開始の締め切り」を決めることによって企画書の起案に限らず、仕事全体を通して早めに取り組むようになります。すぐに行動しないということがなくなるのです。

【ポイント】

仕事になかなか着手しない部下には、いつからやるかを自分で決めてもらおう