生坂政臣教授
千葉大学附属病院総合診療科の生坂政臣教授 Photo by Hiromi Kihara

 生坂教授は診断推論学のエキスパート。全国から「謎の病気」で困っている患者を受け入れている。

「5月から6月にかけて多いのが、原因不明の発熱ということで紹介されてくる『うつ熱』の患者さんです。うつ熱は、放熱機能が失われて体温が上がることを指すので、熱中症では全てうつ熱を合併していることになります。

 うつ熱と診断するのは、熱以外の症状がない場合に限るので、それ以外の症状がみられる場合は熱中症となります。

 発熱だけが1カ月間続くこともありますし、うつ熱の翌日、意識障害が出現し、重症の熱中症になることもあるので、早期に発見し、治療することが重要です」

 生坂教授に、代表的な症例を紹介してもらい、詳しい話を伺った。

〈症例〉1カ月下がらない熱
研修医は「腫瘍熱」と診断した

 ある年の6月7日、千葉県在住の80代女性は、熱っぽい感じがして体温を測定した。37.5度あった。

(あらいやだ、風邪かしら)

 特に寒気やのどの痛み等の症状はなかったが、大事を取り、身体を冷やさないようにして早寝した。

 だが翌日も、その翌日も、体温は下がらなかった。そこで近所のクリニックを受診すると、いつも通りの簡単な問診や聴診に加え、CRP検査(体内に炎症があるかどうかを見る)という血液検査の後、医師は言った。

「CRPの異常はないですね。細菌やウイルスによる感染症とか、膠原病にかかっている場合はこの数値が上がるんですけど、大丈夫そうです。でも念のため、抗菌薬を出しておきますからしばらく飲んでみてくださいね。お大事に」

 指示通り、女性は真面目に服薬した。

 だが、熱はぜんぜん下がらないまま1カ月が経過。さすがに不安になり、前出の医師に相談すると、「原因不明です。大学病院に行ってみますか」ということになり、千葉大学医学部附属病院の総合診療科を紹介された。