文在寅大統領,韓国Photo:Pool/gettyimages

韓国の経済状況も
厳しい状況が続いている

 足元で、コロナウイルスの感染拡大は一つのヤマを越えたようだが、世界経済の本格的な回復にはまだ時間が掛かりそうだ。世界の貿易量は依然として低水準にあり、貿易依存度の高い国へのマイナスの影響はかなり大きい。韓国の経済状況も厳しい状況が続いている。

 そうした状況下、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の政策運営の重要性は一段と高まることになるはずだ。同大統領は、当初、国内の財閥解体を最重要項目の一つに挙げ、韓国経済の構造改革を標榜した。ところが、2018年以降、米中通商摩擦の激化によって輸出の大幅な減少を余儀なくされた。それに加えて、文氏が進めた最低賃金の引き上げや規制強化は、企業の経営を悪化させ雇用が減少させる結果になった。そうなると、韓国経済の大黒柱らともいうべきサムスンの存在は一段と高まる。

 今回、韓国の検察は李在鎔(イ・ジェヨン)副会長の逮捕状を請求した。しかし、ソウル中央地裁は説明が不十分として請求を棄却した。一部の専門家の中には、地検の棄却の背景には文政権の意向も反映されているとの見方もあるようだ。そうした観測が相応の説得力があるとすると、文政権は、韓国経済に大きな影響力を持つサムスン電子などへの明確な対応策を定められていないようにも見える。

 政策運営に「ブレ」が見えるようだと、国のリーダーが世論を一つにまとめることは難しい。文氏は、今後、「米中対立の先鋭化」の中で、両国とどのような関係を目指すか難しい選択を迫られることになるだろう。