2017年7月20日、我が国における収益認識基準の公開草案が公表された。国際会計基準(IFRS)や米国会計基準とほぼ同様の内容だ。この新収益基準の導入により、実務は大きな影響を受けるであろう。会計のグローバルスタンダード化が加速する中で的確に対応するため、従来基準と何が違うのか、適用によりどんな影響があるのか、経営者が知っておかなければならない新収益基準がもたらす経営へのインパクトを聞いた。

経営活動の根幹たる売上高の
単位・金額・タイミングが変わる

編集部(以下青文字):日本基準としては初めて収益全体を取り扱う基準が、2018年4月から導入される予定です(強制適用は2021年4月から)。これにより企業の売上高は何がどう変わるのでしょうか。

一つの収益認識で連結経営を強化する<br />【第1部】収益認識の新基準導入で企業はどう変わるのか
有限責任  あずさ監査法人 アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部長 パートナー 公認会計士
足立 純一 
JUNICHI ADACHI
1994年朝日監査法人(現有限責任 あずさ監査法人)入所。2010年よりIFRS事業部(現アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部)に異動。現アカウンティング・アドバイザリー・サービス事業部長。IFRS導入支援のほか、ポスト・マージャー・インテグレーションアドバイザリー、組織再編関連プロジェクトを多数リード。

足立(以下略):経営者の方にまず知っていただきたいのは、日本初の包括的な収益認識基準が、2018年1月に発効するIFRSおよび米国の新収益基準とほぼ同じ内容になるということです。当面は任意適用ですが、売上というビジネスの最も上流について、世界のルールが一本化される方向に確実に進んでいます。

 新基準導入による大きな変化は、簡潔に言えば次の3つです。まず1つ目は、売上を計上する単位。2つ目は売上計上額そのもの。そして3つ目は売上計上のタイミングが変わります。

 アフターサービスを例に説明しましょう。たとえば、PC(パソコン)販売店がPCを売り、これに無料修理などのアフターサービスをつけたとします。従来なら代金の全額をPCの販売時に売上として計上していたのが、新基準では代金をPCの対価とアフターサービスの対価に分け、アフターサービスの対価は、その実施まで売上計上のタイミングが後ろにずれることになります。

 IFRSを適用している日本の大手消費財メーカーが、流通企業に払っていた物流手数料を売上高から減額するため、約400億円、全体の3%相当の売上高が減る決算予測を出しています。日本基準の下でも、こうしたケースは珍しいものではなくなるのでしょうか。

 新基準導入の結果、「減収」となる可能性は高いです。顧客への支払いについては、実体判断が必要で、名目のいかんにかかわらず、実質的に取引価格のマイナスとなるものは、売上高から控除されます。別な例を挙げれば、名目上、販売促進費であっても、実質的にはリベートであれば、売上高から控除されるため、減収に見えることになります。