銀行・証券・信託 リテール営業の新序列#4Photo:Bloomberg/gettyimages

三井住友信託銀行が今年10月に導入する予定の新人事制度で、リテール部門の待遇を大幅に引き下げることがダイヤモンド編集部の取材で分かった。金利ある世界でリテールの重要性が高まる中、なぜ同行はその潮流に逆らい、リテール部門だけを冷遇するのか。特集『銀行・証券・信託 リテール営業の新序列』の#4では、独自に入手した新人事制度資料を基に全部門の給与レンジを比較し、その狙いに迫る。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

リテール待遇悪化が内部資料で発覚!
新制度の全部門「年収レンジ」を公開

 金利上昇が引き金となり、国内のリテール金融は熾烈な覇権争いに突入した。

 三井住友フィナンシャルグループは総合金融サービス「Olive(オリーブ)」で先陣を切り、PayPayやSBI証券との連携によって巨大な経済圏を構築。三菱UFJフィナンシャル・グループは新ブランド「エムット」を中核に据えた自前主義で巻き返しを図る。みずほフィナンシャルグループも楽天グループとの協業を強化し、顧客基盤の拡大に本腰を入れた。三者三様の戦略がぶつかり合う中、リテール領域は成長の要として再び脚光を浴びている。

 ところが、この潮流に逆行するプレーヤーがいる。三井住友信託銀行だ。同行は今年10月に新人事制度を導入する予定だが、その内部資料には、リテール部門の待遇を大幅に引き下げる驚愕の内容が盛り込まれている。

 今回の制度改定について、同行のある行員は「リテール部門では30代前半で調査役に昇進しても、成績上位25%でようやく年収900万円程度。月45時間の残業代込みでこの水準では、大手行としてあまりに見劣りする」と吐露する。実際、新制度の年収分布を見ると、リテール部門だけが明らかに割を食い、他部門との年収格差が拡大していることが分かる。

 各行が総力を挙げて強化しているリテール部門を、なぜ三井住友信託銀行は自ら切り捨てようとしているのか。

 次ページでは、ダイヤモンド編集部が入手した新人事制度に関する内部資料を基に、部門別の年収レンジを徹底比較。全6部門を対象に、年収の最高値から上位25%、中央値、下位25%、最低値までの分布を公開する。さらにリテール部門の中でも特に待遇悪化の矢面に立たされた役職を明らかにし、その背景や狙いに迫る。