*連載【第一回】はこちら 

【SECTION2】社内外のデータを活用し経営管理とリスクマネジメントを強化

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*【SECTION3】危機発生時のダメージを最小化する3つのアクション
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経営管理システムに
リスクマネジメントを連動

左│PwCあらた有限責任監査法人 パートナー 宮村和谷
右│PwCコンサルティング合同会社 パートナー 齋藤篤史

 リスクマネジメントやガバナンス強化を目的にITシステムを整備してきたが、十分に使いこなせていない、あるいは本当に必要なデータがシステムから入手できていないという企業は、まだまだ多いのが実情だ。

 製造業A社では、最近、自社製品の品質に問題が発生したが、その製品がどの国の、どの取引先に売られているのかを瞬時に把握することができなかった。有事に直面し、調査を開始したが、膨大なデータを社内から集め、ヒアリングも含めて、ようやく整理ができたのちに明らかになったのは、分散されていない自社のサプライチェーンの実態、すなわち、過度なリスクの集中だった。

 A社のように不祥事が起こった後に、データ整備の価値に気づく企業もあれば、事前にそれを見える化するようなデータインフラの整備を検討する企業も出てきている。両者の違いは何か。おそらく、両者ともに経営管理を目的に財務会計や管理会計のシステムは導入しているが、そこにリスクマネジメントやバリューチェーンがひも付いているかどうかである。

 多くの企業の場合、財務会計や管理会計を担うのは経理・財務担当者である。彼らの関心事は、不適切会計や不正な支出であり、プラットフォームの導入や更新に当たっては、要件定義がどうしても狭まってしまう。CEOが見なければならない、膨大、多岐にわたるリスクマネジメントの観点が盛り込まれず、経営管理という当初の目的さえ十分に果たすことができないケースも少なくない。

 既存の管理会計をはじめとした経営管理システムにリスクマネジメントやバリューチェーンを連動させ、経営トップの意思決定に資するようなインプットを得るには、CEOやCFO、CROがマネジメントレベルで要件定義を行い、管理体制を構築していく必要がある。