2つ目は、大手企業を優先させるかたちで経済策が取られたこと。これは当たり前と思うかもしれませんが、「結局、その支援金で潤うのって役員の懐でしょ?」という批判があります。これは過去に、経営破綻したトーマス・クック社に税金が投入されたときに役員報酬が問題となったことなど、以前から指摘されている問題でもあります。

 政府は雇用を守るためと言うけれど、環境保護を行う会社や事業を支援する形でも新しい雇用の創出ができたんじゃないかという意見があって、私はその意見はもっともだなと思います。

国民の不満を科学者へ向けようとする議員

――3つ目は?

 怒りの矛先を科学者に向けてしまえ、と誘導する政治家がいたことです。クリスチャン・ドロステンという、感染症の専門家(シャリテ大学病院ウイルス学研究所所長)がいるのですが、彼が外国メディアの取材に「私はドイツの国民にとって経済を破壊する者でしかないんです」と答えていて、悲しかった。

 政治家の中にはテレビで「科学者がコロコロ言うことを変えるから政治家も混乱している」と発言するような人がいるんです。

 科学者の知識と政治的な決断は別物。それが国民に明確に理解されていないから、科学者が悪者にされてしまう。国は科学者を守らないといけないのに、批判をあおっている一面があると思います。

――ドイツはヨーロッパのほかの国に比べて死者数を抑えられたとはいえ、社会に与えたショックは深刻なのかなと思います。人々の様子はどうでしょう? 

 最初はメルケル首相のスピーチが称賛されたり、理解を示したりする人も多かったです。一方で、制限がある中でも市民や民間企業が立ち上がって、政府や行政ができていないことや過ちを指摘するということもありました。

 また、医療崩壊はしていないけれど、コロナ陽性者が最優先でほかの患者が病院で待たされるなど、患者も怖くて病院へ行けないということもありました。

 私の結婚式にも来てくれた知人の男性も、持病があったのですが病院へ行けなくて、亡くなってしまいました。