東京都知事選が告示されました。現職の小池百合子知事を筆頭に主要候補の顔ぶれを見ると、猛獣や珍獣がそろったサファリパークみたいな感じもしますが、やはり注目すべきは各候補の選挙公約です。
ただ、少なくとも現状明らかになっている各候補の主張を見る限り、どの候補にも共通して大きな問題があると思います。これでは、どの候補が知事になっても、都市としての東京の競争力は高まらないのではないでしょうか。
コロナ前の東京の再現ばかりでいいのか?
その大きな問題点とは、一言で言えば、どの候補も「コロナ前の東京の再現」ばかりを言っていることです。
というのは、コロナウイルスの流行はまさに100年に一度の災厄である以上、幾つもの不可逆的な構造変化を社会にもたらすので、人の価値観や都市・社会のあり方も大きく変えるはずだからです。
そうした当たり前のことを考えると、コロナ禍の最中での都知事選であるからこそ、これから長く続くであろう“ウィズコロナ”“アフターコロナ”の時代に東京はどのような都市に進化すべきか、どのような価値観を重視すべきかといったビジョンを明確にし、その実現にどのような政策が必要と考えているのかを、各候補は明確にすべきなのです。
ところが、例えば小池知事の公約を見ると、9つの柱のうちの「コロナの感染拡大防止」は知事としては当たり前の仕事です。さらに、デジタル化の推進やシニア活躍、共生社会といった政策課題も、コロナ前から進める必要があった当たり前の政策です。アフターコロナの東京が目指すべき姿を語らず、コロナ前からの当たり前の課題ばかりを並べて「東京大改革2.0」と大見得を切られても、都民からすれば、ちょっと困るよなあと感じてしまうのではないでしょうか。