「東京アラートを発動いたします」。6月2日夜、グリーンとグレーのツートンカラーの防災服に身を包んだ東京都知事の小池百合子(67)は記者会見で都民にこう呼び掛けた。この日に限らず小池をテレビで見ない日はない。新型コロナウイルスを巡って必ず日に1度は何らかの形で発信を続ける。
官房長官の菅義偉が「コロナウイルス問題は東京問題」と言うように、都は感染者数と死者数共に他の道府県に比べ突出しており、小池の判断と方針決定が日本社会全体に影響を与える。
ただし感染症問題が広がった当初、小池はほとんど目立たない存在だった。むしろ独自の緊急事態宣言を打ち出した北海道知事の鈴木直道(39)ら若い地方の首長が大きな流れを作っていた。その小池がギアチェンジをしたのは3月23日の記者会見だ。テレビのニュースキャスターの経験がある小池は、会見や会議でフリップを多用する。この日も何枚かのフリップを手にしていたが、うちの1枚が社会に大きなインパクトを与えた。