一見保守的な安倍政権は、政策的にどんどん左に張り出して、左派野党の政策的な居場所を奪っていったのである。旧民進党系の国民民主党・立憲民主党や社民党は、存在感をなくしていった。新しい左派ポピュリスト政党である山本太郎氏率いる「れいわ新選組」が登場したが、「消費税ゼロパーセント」という、絶対に自民党が言えない非現実的なことをアピールするしかないところまで、追いやられてしまったのだ。

 要するに、安倍政権は保守から左派まで幅広い支持層を取り込んで、ポピュリズム政党が台頭する余地を塞ぎ、安定した支持率を確保していた。だから欧州のように、元々不人気でバラマキを始めた途端に政権の支持率が急上昇する、というようなことは起きなかったのだ。

 日本国民にとって、バラマキは特段珍しいことではなかったといえる。むしろ、コロナ対策の意思決定の稚拙さが目立つことになった。緊急経済対策は、欧州と比較して、一長一短というのが公平な評価だろう(第239回・P4)。だが、欠陥ばかりが厳しく批判されることになってしまい、結果として安倍政権の支持率が大きく下がることになったのだ。

欧州と日本の共通点
政権与党だけに国民の注目が集中

 それでも、欧州と日本には共通点もある。それは、よくも悪くも政権与党だけに国民の注目が集中していることである。コロナ禍という未曽有の危機において、国民の関心は「どのようにわれわれを救ってくれるのか」だけだ。それができるのは、政権与党だけだからだ。

 各種世論調査で安倍政権の不支持率が50%を超え、メディアやSNS上で、安倍政権への批判は、過去にないほど厳しいものになっている。安倍政権にとって、最悪な状況のように思えるが、一方で野党の支持率はまったく上がらない。野党の存在感の低下もまた、過去にないほど深刻である。

 特に、「れいわ新選組」の存在感低下は深刻だ。コロナ禍が始まってから、山本太郎代表の動向はまったくといっていいほど話題にならなかった。山本代表が東京都知事選への立候補を表明した時、「そういえば、この人どこにいたの?」と率直に思った人は少なくなかったはずだ。

 むしろ、コロナ禍において安倍政権の「対抗軸」のような立場になったのは、左派野党ではなく、小池都知事や吉村洋文・大阪府知事、鈴木直道・北海道知事など、地方自治体の首長だった(第240回)。コロナ対策で地方が示した実行力は、「なんでも反対」の左派野党よりも、国民に対して圧倒的な説得力を持っている。