業績悪化は本当に全てコロナのせい?データ活用で営業は勝ち残れるデータドリブンなビジネスに適応していく必要がある(写真はイメージです) Photo:PIXTA

新型コロナウイルスの影響は、ビジネスに大きな変化をもたらしているが、必ずしも日本全ての企業の見通しが悪いとは限らない。法人営業にとって変化が求められる時期ではあるが、データを武器にすることができれば、打開策を見つけられるかもしれない。(AKTANA International LLC プリンシパルコンサルタント 高橋洋明)

コロナで企業の購入率は下がった?
海外での研究による結果とは

 前回は、

●新型コロナウイルスの猛威によって営業活動が大きく変化したこと
●これまで個々の営業活動の充実度が分かりにくかったが、コロナ以降は営業活動の内容が差になって見えるようになってきたこと
●マーケティング全般を見直し、テコ入れすることが企業の業績に寄与する可能性が高いこと

 などを見てきた。

 今回は、新型コロナによるこれからの私たちのビジネスの変化を考えたい。状況が刻々と変化する現状なので、このコラムを皆様がお読みいただく時期と、私が執筆している6月1日現在とでは状況が異なっている可能性があることもあらかじめお断りしておく。

 まず、「新型コロナのパンデミックによる企業の購買行動の変化」について考察した『Industrial Marketing Management』Volume 88,July 2020, Pages 195-205にある、“Industrial buying during the coronavirus pandemic: A cross-cultural study”という論文を紹介したい。これはWarwick Business SchoolとPaderborn大学らの研究によるものだ。

 この研究によれば、下記のことが明らかになった。

(1)新型コロナのパンデミックは、法人顧客の購入率を低下させる。
(2)低価格の製品の購入率への影響は少ない。
(3)法人顧客の購入率は、短期志向(社会が期待する規範に従い、体面を大切にし、個人的な安定と伝統を重んじる考え方。例:結婚式にお金をかけるなど)で不確実性(不確実な状況や未知の状況に対して不安を感じる程度)を回避する国では下がり、高価格の製品でさらに下がる。
 (4)法人顧客の購入率は、長期志向(現実主義的な考え方。例:子どもの教育への投資や倹約など)で不確実性を回避する国ではあまり下がらない。

 この研究では、異文化がビジネスに与える影響を理解するために、世界各国の文化の性質の違いを踏まえた分析も行っている。(3)で挙げた短期志向は西欧諸国の全てがその傾向にあり、これらの国の多くはユダヤ教、キリスト教、イスラム教、すなわち唯一神を基本としている。

 一方、中国、台湾、日本、韓国、シンガポール等東アジア諸国、およびインドなど多神教の伝統を持つ国々が長期志向の傾向にあることが明らかになっている。

 したがって、顧客が(4)であれば、「コロナで日本国内の多くの企業が、ビジネスで大きな損失を出した」などの報道は、もしかすると全ての企業には当てはまらないかもしれない、ということだ。