あらゆる産業が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けている。こうした中で働き方の転換が急務となっているのが「営業マン」たちだ。足で稼ぐことが当面かなわない状況が続く中で、営業の役割はこれからどう変わっていくのだろうか。著書『営業部はバカなのか』で知られる北澤孝太郎氏が解説する。
コロナ禍でデジタル化は待ったなし
営業マンの働き方はどう変わる?
今までに経験したことのない状況とそれに伴う不安が、ビジネスシーンに影響を及ぼし始めています。私の予想ですが、これから1年、いや2年くらいは経済の落ち込みは続くと覚悟しないといけないでしょう。そんな中で、営業部門や営業マンは、3月末の決算数字を作り終えてからは、動きたくても動けない、受注見送りの対応に追われている、と前向きでない状況にあると聞きます。
では、こうした状況下において、営業部門を取り巻く環境は、今後どうなっていくのでしょうか。そして、こんなときだからこそ、何をしておくべきなのでしょうか。
思い返してみれば、今回のような事態に陥る前から、「営業活動」におけるAIを含むデジタル技術利用は、間違いなく進んでいました。しかし、ビジネスはコミュニケーションによるコンセンサス作りが大事であり、そのコミュニケーションは対面の方が圧倒的に取りやすいという感覚があったために、とにかく集まる、会うことが優先されてきました。それに伴う時間や交通費は、無駄とは考えられてこなかったのです。
もともと、営業する側も営業される側も、「無駄なことはできるだけ避けたい」という風潮はありました。しかし、経済成長期の成功体験、そうした経験を積んできたバブル世代の旧来型営業リーダーの存在が、経済成熟期、あるいはマイナス期に対応した営業インフラの導入を阻んできました。
導入費用がかかる、教育コストがかかる、それが一時的に収益を圧迫するというのが名目で、実際のところはそんなことをしたら、自分自身が付いていけなくなり立場を失う、立場を失ったらこの会社で行き場を失ってしまうというのが本音でしょう。
「時候の挨拶から商談になったこともある。だから、とにかく訪問して、会って話をしてこい」「営業が社内に多く居過ぎる。営業はとにかく外に出て、顧客に情報を届けてこい」――。部下にこんなはっぱを掛けながら、慣れ親しんだ顧客と懇親を深めるためといって飲みに行く上司がいかに多いことか、今の営業部に違和感を覚えている若手の方ならよくわかるはずです。