全国584農協を束ねるJA全中の会長選挙で、現職で守旧派の中家徹氏が当選した。これによりJAグループは「組織の老衰」と「改革の時間切れ」という2つの致命的リスクを抱え込むことになった。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
自民党・二階幹事長頼みで
「改革逃れ」の道を選んだ
改革派と守旧派の一騎打ちになっていたJA全中の会長選挙の結果が7月3日、判明した。
今回の選挙は、日本銀行によるマイナス金利政策の長期化で、金融事業の収益が悪化している農協の事業改革の旗振り役を決めるという重要な意味を持っていた。同時に、JA全中にとっては、農協法で特別に認められていた特権(農協を監査、指導する権限)を失った後、どう自らを再定義し、JAグループの中で役割を果たしていくかという組織の根幹に関わる問題が争点だった。
結果は、現職でJA和歌山中央会会長の中家徹氏が157票を集め、JA徳島中央会会長の中西庄次郎氏(得票数92票)に圧勝した。中家氏は、地元の近畿ブロックだけでなく、大票田の北海道や長野県などの組合長らからの支持を集めた。
最大の勝因は、中家氏の地元選出の衆院議員である自民党の二階俊博幹事長との親密さだ。農協組合長らは、この中家氏の政治力があれば、規制改革推進会議などからの改革圧力を抑えられると期待し、同氏に票を投じたとみられる。
農協が最も避けたいのが、准組合員(非農家の組合員)による農協の事業(住宅ローンや保険など)利用の制限である。実際に、中家氏は第一の公約に「准組合員の事業利用規制の阻止」を掲げて選挙を戦った。
農協は一見、全中会長選挙で、安定の道を選んだようだが、長期的に考えれば2つの重大なリスクを抱え込んだといえる。