世論調査で、激戦州の支持がバイデン候補に傾いているのは、バイデン候補を積極的に支持しているというよりは、現状打破のために現体制に変革を求める声を反映した色彩が強い。

 だがバイデン陣営の行動は、トランプ陣営の「熱」に比べると、どこか受け身だ。

 新型コロナウイルス対応でも感染拡大防止を重視した慎重姿勢で、経済優先を掲げるトランプ陣営との違いを出そうとしているが、それを目玉に選挙戦を戦うということでもなさそうだ。

 社会保障改革ではオバマケアの維持を掲げ、またトランプ氏が軽視する同盟国との連携などを挙げるなど、まともな政策を掲げているのだが、一方で、変革の機運は相対的に少なく映る。

 格差拡大や長年の人種問題がいまだ解決されない閉塞感が強まる中で現状打破を求める声は、共和党、民主党支持者にかかわらずある。トランプ氏、バイデン氏のどちらの候補が、そうした民意を引きつけることになるのか。 

 少なくとも、人々の意識をたきつけるのはトランプ大統領の方が上手だ。

 前回の選挙で「忘れられた人々」の不満や不安をあおって勝利した実績もあり、今後の行動で形勢が再び変わる可能性はある。

 トランプ大統領自身も情勢を逆転する機会があると考えているはずだ。

 その一つは、選挙戦終盤でのバイデン氏との1対1での候補者討論だろう。

 過去の大統領選でも候補者討論が勝敗の流れを一気に作ったことも少なくない。さまざまな挑発やオバマ政権時代の“弱腰外交”などの批判で討論の主導権を握り、バイデン氏を打ち負かせると思っているのではないか。

 そして次に考えられるのは、香港問題や米中貿易合意の不履行などを口実に中国に、また場合によっては北朝鮮に対してさらなる強硬措置を打ち出し、無党派層も含めて自らへの求心力を高めようとする可能性がある。

 世論調査では、トランプ大統領の劣勢は確かだが、このまま事態がバイデン候補の勝利に粛々と進んでいくとみている人はあまりいない。

(三井住友銀行 チーフエコノミスト 西岡純子)