ドナルド・トランプ
米国で、トランプ大統領の再選に強い逆風が吹いている。劣勢を加速させる「三重苦」とは Photo:123RF

米国で、ドナルド・トランプ大統領の再選に強い逆風が吹いている。人種問題への関心の高まりに加え、新型コロナウイルスの感染拡大と、それにともなう景気減速という三重苦によって、再選失敗への道筋がはっきりと浮かび上がってきた。(みずほ総合研究所調査本部 欧米調査部長 安井明彦)

「三重苦」でトランプ氏が劣勢
バイデン氏を追う立場に

 米国の大統領選挙で、バイデン氏の優位性が急速に高まっている。オンライン賭け市場のPredictItでは、6月に入った頃から、バイデン氏の勝利に賭ける割合が、トランプ氏の再選を予測する割合を上回っている。

 世論調査でも、バイデン氏のリードが広がっている。各種の世論調査を平均しているReal Clear Politicsの集計によれば、5月中旬に4%台だったトランプ氏に対するバイデン氏のリードは、6月上旬には8%台にまで広がった。ウィスコンシン州やミシガン州など、大統領選挙のカギを握るといわれる州でも、トランプ氏がバイデン氏にリードを許す世論調査が相次いでいる。

 大きな契機となったのは、5月25日に黒人男性のジョージ・フロイド氏が、白人警官による暴行で亡くなった事件である。全米各地で抗議運動が盛り上がり、対立を煽るようなトランプ氏の言動にも批判が集まった。

 それでなくてもトランプ大統領には、新型コロナウイルスの感染拡大と、それに端を発した景気減速という逆風が吹いていた。5月27日には、新型コロナウイルスの感染による死者が10万人を超え、6月8日には全米経済研究所(NBER)が景気後退入りを正式に宣言している。

 再選率が約7割に達するなど、伝統的に米国の大統領選挙は現職に有利である。しかし、今回の場合には、人種問題、新型ウイルス、そして景気減速という三重苦によって、トランプ大統領が再選に失敗する道筋がはっきりと浮かび上がってきた。

進む民主党の結束
人種問題への関心の高まりが後押し

 三重苦のそれぞれが、トランプ大統領の再選失敗シナリオを構成している。

 まず第一の要素として、人種問題への関心の高まりが、民主党の結束を強めそうだ。2016年の民主党の敗因の1つだった党の分裂が緩和され、「打倒トランプ氏」の旗印の下での結束が容易になってきた。

 人種問題を1つのきっかけとした民主党支持者の急速な盛り上がりは、世論調査から明らかだ。6月上旬にCNNが行った世論調査では、「前回の大統領選挙よりも、投票に熱意を感じている」と回答する民主党支持者の割合が、共和党支持者で同様の回答を行った割合を上回った。その差はわずかだが、2カ月前の4月上旬に行われた調査では共和党支持者に20%以上の差をつけられていたことからも、明らかに民主党支持者の熱意は上昇気流に乗っている。